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【専門家監修】猫が肉球を舐める理由とは?考えられる理由や対処法を解説

目次
    この記事を書いた人
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)
    「うちの猫が肉球をずっと舐めている…」と気になったことはありませんか?

    猫が肉球を舐めるのは毛づくろいの一環であることもあれば、ストレスや病気のサインである場合もあります。肉球を舐める理由に応じて適切な対処が必要です。

    この記事では、認定動物看護師の資格を持つ筆者が、猫が肉球を舐める理由・考えられる病気・対処法などについて詳しく解説します。

    猫が肉球を舐める主な理由

    猫が肉球を舐める主な理由
    ここでは、猫が肉球を舐める主な理由を4つまとめました。

    毛づくろいの一環として

    猫は、身だしなみを整える・異物を取り除く・体温調整・全身へのにおい付け・気持ちを落ち着かせるなどの理由から毛づくろいをしています。

    その一環として肉球を舐めることもあるでしょう。

    しかし、毛づくろいが異様に多くなる同じ場所ばかり舐めるなどの様子が見られたら注意が必要です。ストレス・皮膚炎・アレルギー・ケガなどが原因になっている可能性があります。

    不安やストレスのサイン

    猫は不安やストレスを感じると「気持ちを落ち着かせよう・紛らわせよう」と思って肉球を舐め続けることがあります。

    不安やストレスを感じているときは、肉球を含め身体の同じ場所ばかりを執拗に舐める・噛むというような様子が見られることが多いです。

    肉球を舐め続ける行為がクセになってしまうと、血が出るまで舐めたり噛んだりすることもあります。

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    愛猫が隠れて出てこない5つの理由とは?対処法や注意点、病気かどうか確認する方法を解説!

    指間炎(しかんえん)を発症している

    指間炎は猫の肢先に起こりやすい皮膚トラブルです。

    アレルギー・細菌や真菌感染・免疫疾患・代謝性疾患・寄生虫感染・異物や外傷・濡れている状態が続くというような環境要因など、さまざまな原因があります。

    症状やサインは以下の通りです。
    【症状・サイン】
    • 肉球や肉球間の皮膚の腫れ・発赤
    • 肉球周りの脱毛
    • 肢先を執拗に舐める・噛む
    • 舐めすぎて毛の色が変色する
    • 歩きにくそうにする
    • 肉球がいつも湿っている(常に舐め続けているため)

    指間炎は発症原因により治療方法が異なります。動物病院で診てもらい、正しく治療を進めていきましょう。

    ケガや火傷をしている

    肉球周りを気にしている様子が見られたら、肢先にケガや火傷をした跡がないか見てあげましょう。

    ケガや火傷を放置すると傷口から細菌感染を起こすリスクがあります。「ただの小傷」で済まさず、なるべく早く動物病院で診てもらい治療やケアを進めていきましょう。

    猫が肉球を舐めすぎるとどうなる?

    猫が肉球を舐めすぎるとどうなる?
    猫が肉球を舐めすぎるとさまざまなリスクが伴います。

    肉球の炎症やただれのリスクがある

    猫の舌はザラザラしているため、皮膚を舐め続けると傷つけやすく、脱毛することもあります。

    傷口は細菌や真菌の感染経路になりやすいです。とくに肉球は常に地面に触れているため、さまざまな菌が付着しやすいでしょう。

    細菌・真菌感染を起こすリスクについて、次の項で詳しくまとめました。

    細菌・真菌感染を起こすリスクがある

    肉球に傷があると、唾液に含まれた口内細菌が傷口から入り込み感染を起こす場合があります。

    また、湿気の多い環境では真菌(カビ)が繁殖しやすく、そういった環境にいる猫では真菌感染を起こすこともあります。

    細菌・真菌感染では炎症時と似たような症状が多いです。以下のような症状・サインが見られたら細菌・真菌感染を疑って動物病院を受診しましょう。
    • 歩くときや、飼い主さんが肢先を触った時に痛そうにする
    • 膿が出ている
    • 肉球の発赤
    • 肉球がブヨブヨと腫れた状態が見られる
    • 痛みやかゆみで舐めたり噛んだりする

    舐めグセが悪化して慢性化することも

    肉球の傷や感染を放置し、舐めグセの対処が遅れると、悪化して慢性化するリスクがあります。

    慢性化すると、炎症や感染の治療に時間がかかってしまいます。

    また、肉球を舐める・噛む行為がクセづいてしまえばやめさせるのも困難になりかねません。

    悪化してしまう前に対処できるよう「肉球を舐める理由の究明」はできるだけ早く行ないましょう。

    猫が肉球を舐めすぎているときの対処法

    猫が肉球を舐めすぎているときの対処法
    猫が肉球を舐めているのが一時的であれば、とくに問題はありません。

    しかし、長時間同じところを執拗に舐めている噛んでいる発赤や脱毛を起こしている爪が折れているなどの症状がある際には、何かしら異常が起きている可能性があります。

    肉球を舐めすぎている様子が見られたら、以下のように対処していきましょう。

    エリザベスカラーや靴下などで肉球を舐めさせないようにする

    病院に連れていくまでの間や治療期間中は、以下のような方法で肉球を舐めさせないようにし、傷つかないように・傷を広げないようにしてあげることが大切です。
    • エリザベスカラーを付けて口が足に届かないようにする
    • 靴下や保護カバーで肉球をカバーする

    エリザベスカラーや靴下が手元になければ、「タオルとネット包帯で代用する方法」「カップ麺容器をエリザベスカラー代わりにする方法」があります。
    【タオルとネット包帯で代用する方法】
    1.フェイスタオルを3つ折りにする(幅10cm程度に)
    2.愛猫の首周りに、きつくない程度に、タオルの端どうしが重なるところまで巻きつける
    3.首に巻き付けたタオルの上からネット包帯をはめる
    4.タオルがきつすぎたりゆるすぎたりしないか調整をする

    ネット包帯がなければ、使い古しのストッキングでも代用OK
     
    【カップ麺容器をエリザベスカラー代わりにする方法】
    1.よく洗ったカップ麺容器を用意
    2.愛猫の顔の大きさに合わせて底をカッターなどで切り抜く(小さめに切り抜いて少しずつ調整していく)
    3.愛猫にはめてみて指2本分ほど入る大きさに調整する

    カップ麺容器は「底が深すぎず、猫の顔がぴったりはまるくらいの大きさのカップ麺容器」などがおすすめ

    エリザベスカラーや靴下を嫌がる子にも使える方法です。ぜひ試してみてください。

    「肉球を舐める理由」の特定

    同じ「肉球を舐める行為」でも理由によってサインが異なります。

    ここでは、猫が肉球を舐める理由ごとのサインを表にまとめました。当てはまるものがあるかチェックしてみましょう。
    肉球を舐める理由サイン サイン
    毛づくろいの一環として 全身を丁寧に舐めている・リラックスしている様子が見られる
    不安やストレスのサイン 一点を集中的にずっと舐め続けている・激しく舐める・毛を噛むような様子が見られる
    皮膚トラブル・アレルギー・指間炎 肉球や皮膚の腫れ・発赤・肉球を噛んでいる・執拗に気にしている・爪が折れている
    ケガや火傷をしている 体の一部を気にして舐め続ける・触るのを嫌がる・皮膚が赤い・腫れている・水ぶくれができている

    動物病院を受診する

    皮膚トラブル・アレルギー・指間炎を起こしていそうな場合やケガ・火傷をしている場合は、以下のような様子が見られます。
    • 肉球が腫れている
    • 肉球の間の皮膚が赤くなっている
    • 皮膚がただれている
    • 肉球から血が出ている
    • 爪が折れている

    当てはまるものがあれば早めに動物病院を受診して治療を開始しましょう。

    猫の肉球を守るためのケア・予防策

    猫の肉球を守るためのケア・予防策
    愛猫の肉球を守るため、そしてこれ以上舐めグセの悪化を防ぐため、今からできるケアや予防策をまとめました。

    肉球が汚れたらやさしく拭き取る

    肉球が汚れたら、蒸しタオル肌にやさしいウェットティッシュなどで拭き取ってあげましょう。

    とくに汚れがなくても、拭いてあげることで肉球を舐めるのが落ち着くこともあります。

    嫌がる子もいるため、無理のない範囲で行ないましょう。

    肉球を保湿・保護する

    猫の肉球も人と同じで乾燥することがあります。肉球クリームやジェルなどで保湿・保護してあげるのがおすすめです。

    また、猫も歳を重ねると血行が悪くなります。クリームやジェルを塗る際にマッサージを行なって血行を促してあげるといいでしょう。

    肉球マッサージなどで日ごろから肢先の様子をチェックすることで、異常の早期発見や血行不良による麻痺の予防などにもなります。嫌がる様子がないかよく見ながら、無理のない範囲で行なってみてください。

    〈おすすめの肉球クリーム・ジェル〉
    ヒマワリ油とミツロウの無添加肉球クリーム
    肉球ぷるぷるジェリー

    定期検診によるチェックで異変の早期発見

    飼い主さんには愛猫が健康に見えても、小さな異変が身体のどこかで起こっているかもしれません。

    とくに肉球など肢先・足裏の異変は普段の生活の中では気付きにくく、見逃されがちです。

    動物病院で定期的に診てもらえば小さな異変にも気付いてもらいやすいでしょう。

    月に1回の頻度で簡単な検診を受けさせるのがおすすめです。

    遊びや生活環境の工夫でストレス対策

    猫が肉球を執拗に舐める原因の一つに「ストレス」があります。

    まずは猫がストレスを抱える原因を知り、改善の糸口をつかんでいきましょう。
     
    【猫がストレスを抱えやすい原因】
    • 運動不足や飼い主さんとのコミュニケーション不足
    • 引っ越しや旅行などでいつもと違う環境に置かれる
    • 部屋の模様替え
    • 知らない人がいきなり家に来る
    • 掃除機や大きな話し声などの騒音
    • 芳香剤・消臭剤など不快なニオイ
    • 過度なスキンシップ
    • 雷や台風など天候による騒音

    これらのストレスは、コミュニケーションの取り方や生活環境の整え方次第で徐々に解消できるものです。どんな方法があるか具体例を紹介します。

    【コミュニケーションの取り方によるストレス対策】

    ◎おもちゃで遊ぶ
    「おもちゃで遊ぶ」ことは、猫にとって「狩猟本能を満たすこと」につながります。飼い主さんとのコミュニケーションも取れるため、ストレスの解消に効果が期待できるのです。

    猫によっておもちゃの好みは分かれます。愛猫が気に入るおもちゃを見つけてあげましょう。

    〈関連記事〉
    【猫の運動不足】年齢や猫種別の適切な運動量とは?|運動不足解消のおもちゃやグッズもご紹介!

    ◎適度な距離間でのスキンシップ
    猫も人間のように、好き嫌いや性格はそれぞれです。

    自らすりすりと甘えるスキンシップが好きな子もいれば、気まぐれな子、スキンシップをあまり取りたがらない子など、猫の数だけ性格の違いがあります。

    愛猫の性格をよく理解し、過度になりすぎないようスキンシップの取り方に気を付けましょう。

    【生活環境の整え方によるストレス対策】

    ◎猫が安心して過ごせる場所を用意してあげる
    猫は、自分一匹だけでいられる空間があると安心しやすいです。ケージ・猫ちぐら・ベッド・猫専用の小部屋や小スペースなどを家の中に用意してあげるといいでしょう。

    また、外からの騒音がストレスになっていそうな場合は、窓まわりの工夫も効果的です。遮音効果のある窓に取り替えたり、内窓と外窓の二重構造にしてみたり、工夫の仕方はさまざまです。
    プラマードU
    最近では「プラマードU」のように、今ある窓に取り付けるだけの内窓リフォームもあります。

    その他、ストレス対策に関しては以下の記事にさまざまなアイデアをまとめています。ぜひ参考にしてみてください。

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    猫が快適に過ごせる「専用部屋」の作り方!広さやレイアウト、インテリアのコツを伝授

    ◎キャットタワー・キャットステップなどで運動できる環境づくり
    運動不足も猫にとってストレスの原因になります。

    猫は上下運動や高所を好むため、家の中にキャットタワーやキャットステップを用意してあげましょう。
    MYZOOの「六角ハウス」
    壁に取り付けるタイプのキャットステップはMYZOOの「六角ハウス」がおすすめです。設置する際は好きな形・並びにアレンジして設置でき、キャットステップ・キャットウォーク・隠れ家ハウスなど、いろいろな用途に使えます。

    また、賃貸や狭い部屋でも猫が運動できる環境は作れます。以下の関連記事で詳しく解説しているため、ぜひチェックしてみてください。

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    肉球を舐める「なぜ?」に気づくことが第一歩

    猫が肉球を舐める行為は、毛づくろいの一環である場合もあれば、ストレス・病気・ケガ・火傷など対処が必要な原因が隠れている場合もあります。

    「様子がいつもと違う」「何かおかしい」と感じたら、軽視せず理由を探ってみましょう。とくに問題がなければ安心できますし、問題があれば悪化する前に早めの対処ができます。

    愛猫を大切に想う飼い主さんの不安が少しでも解消できるよう、この記事が参考になれば幸いです。

    〈関連記事〉
    狭い部屋でも快適に!猫が喜ぶ住まいの工夫
    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)