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猫がいるご家庭では、完全室内で飼育されている方も多いのではないでしょうか?
環境省でも、猫の安全や健康のために室内飼いを推奨しています。(出典:環境省 猫の室内飼育)
大切な愛猫を守るための室内飼いですが、一方で限られたスペースで生活することになるため、どうしても運動不足になりがちです。
「猫の運動不足を解消するためにはどうしたら良いのだろう?」
「うちの猫は、どれくらいの運動量が必要なのだろう?」
猫を飼育する上で、愛猫の運動不足というのは飼い主を悩ませる問題のひとつですよね。
今回は、年齢や猫の種別ごとに適した運動量や運動不足の解消方法、そして年齢に合わせたおすすめのおもちゃやグッズについてご紹介します。
【危険信号!】猫の運動不足を見分ける5つの基準
猫の運動不足は、ストレスや生活習慣病などの病気のリスクを高めます。
さまざまな問題行動を引き起こす原因にもなるため、日頃から適度な運動を心がけることはもちろん、猫の様子を注意深く観察することが大切です。
ここからは、猫の運動不足の見分け方について解説します。
運動不足を見分けるための主なポイントは次の5つです。
①肥満
一番分かりやすいサインが、猫の体型です。
猫の体格には個体差が大きいので、体重だけでは肥満かどうかは分かりません。
肥満であるかを判断するには、環境省が公表している「猫のボディコンディションスコア(BCS)」と照らし合わせてみましょう。
出典:環境省 飼い主のためのペットフード・ガイドライン(P17)
②過剰なグルーミング
グルーミングとは「毛づくろい」のことをいいます。
身体を清潔に保つだけでなく、体温調整をしたり、気持ちをリラックスさせたりする効果があり、猫によくみられる行動です。
適度な回数であれば問題ありませんが、運動不足になると、ストレスから同じところばかりを何度も舐め続けてしまう「過剰グルーミング」をしてしまう場合があります。
グルーミングのやり過ぎは、脱毛や皮膚炎を起こしてしまうこともあるため注意が必要です。
③急に走り回る「真空行動」
突然家の中を走り回ったり、何もないところに飛びついたり、高いところに駆け上がったり……。
これらの行動を「真空行動」といいます。
猫が真空行動をするのは「野生時代の本能のなごり」と言われていますが、思うように運動ができず、有り余ったエネルギーを発散させるために真空行動をすることがあります。
他にも、環境の変化などによるストレスが原因となっている可能性も考えられます。
④いたずら行動が増える
猫は好奇心旺盛な生き物です。
特に年の若い猫はいろんなことに興味を持ち、いたずらをすることも多いでしょう。
やってはいけない場所で爪とぎをしてしまったり、襖(ふすま)や障子、壁紙を破いたり。
これらの行動が、日頃の遊びや習慣の一環であれば問題ありません。
しかし「以前はやっていなかった問題行動が増えた」と感じる場合は、運動不足によるストレスが原因となっているかもしれません。
⑤無気力・無関心
肥満体型の猫は身体が重く、動きにくかったり疲れやすかったりという理由から、運動をうながしても関心を示さないことがあります。
一方、遊び盛りである子猫や、成猫が遊びに興味を示さなくなった場合は、心因性の体調不良である可能性が考えられます。
いずれの場合も、獣医師に診てもらうことをおすすめします。
猫に必要な運動量はどれくらい?年齢や毛の長さで異なる
猫に必要とされる運動量は、猫の年齢や猫種によって異なります。
ここでは「年齢」と「猫の毛の長さ(猫種)」それぞれについて解説します。
猫の「年齢別」でみる必要な運動量
子猫(生後7ヵ月程度)
生後6~7ヵ月程度までの子猫は、遊び盛りで好奇心旺盛な時期です。
きょうだい猫とじゃれ合ったり、追いかけっこをしたり。
一人で遊ぶことも多く、放っておいてもおもちゃや身の回りのものにじゃれついて、じっとしていることが少ないでしょう。
子猫の場合は、1日20分以上の運動時間を作ってあげるとよいですね。
ただし、子猫は自分の体力以上に興奮して遊んでしまいがちなので、休息する時間もしっかりとるようにしましょう。
成猫期(生後7ヵ月~7歳くらいまで)
生後半年頃から7歳くらいまでの成猫期と呼ばれる猫は、子猫期に比べだんだんと落ち着きが出てきますが、まだまだ活発な時期です。
筋力を鍛える「ジャンプ遊び」をメインに、上下運動を取り入れながら「狩猟本能」を満たしてあげる遊びで運動不足を解消させましょう。
ひとり遊びも少なくなっていくため、飼い主が積極的に遊びに誘って運動をうながしてあげてください。
老猫期(7歳以降)
7歳以降はシニア期に突入します。
徐々に老化が進み、筋肉量や運動量も減って、寝て過ごす時間が増えていきます。
それでも健康で長生きするためには、シニア期であっても適度な運動が必要不可欠です。
1日1回以上、10分程度を目安に、無理のない範囲で遊びに誘ってみましょう。
猫の「毛の長さ」でみる必要な運動量
短毛種
南方の暑い地域をルーツとする短毛種の猫は、活発な性格が多いとされています。
筋肉質で引き締まった身体をしており、活動範囲が広く運動量が多いのが特徴です。
1日20~30分程度の運動時間を確保してあげましょう。
長毛種
北国の寒い地域にルーツにもつ長毛種は、大柄でたくましい体型が特徴です。
活動範囲は狭く、温厚で大人しい性格をしています。
短毛種に比べると必要とする運動量は少なく、1日10~15分程度でOKです。
※長毛種の中にはサイベリアンやソマリ、ノルウェージャン・フォレストキャットのように、運動量が多い猫種もいます。
複数回に分けて遊んであげよう
上記でご紹介した運動時間はあくまで目安です。
猫の体力や気分によって柔軟に対応してあげましょう。
また、一緒に遊ぶときは1日2回以上に分けて運動させてあげると良いでしょう。
1回あたりは短い時間でも、1日のトータルで必要時間が確保できれば理想的です。
猫を運動させる5つの方法
猫の運動不足を解消させるには、飼い主の心がけが大切です。
特に年を重ねた猫は自ら動くことが少なくなるため、自然と運動できる環境を整えてあげると良いでしょう。
猫を運動させるために、次の5つの方法についてご紹介します。
①飼い主が積極的に遊んであげる
成猫は、だんだんとひとり遊びの頻度が減っていきます。
飼い主側から積極的に遊びに誘ってあげましょう。
猫じゃらしなどで猫の狩猟本能を刺激する遊び方を取り入れてあげると、喜んで食いついてくるはずです。
また、上下の動きを意識して運動量をアップさせましょう。
②動き回りやすいスペースを確保してあげる
猫が思う存分動き回れるよう、邪魔になりそうな荷物などは片付けて部屋の中を整理しておきましょう。
猫の動きを邪魔しないように、廊下のドアを開放してあげるなどの工夫も必要です。
一筆書きで家の中を一周できる「回遊動線」の間取りだと申し分ないでしょう。
③ひとり遊びできるおもちゃを与えてあげる
子猫の時期だけでなく、大人になってもひとり遊びを好む猫もいます。
そんな猫には、ひとりで遊べるおもちゃを用意してあげましょう。
運動能力が落ちてきた老猫にもおすすめです。
飼い主が忙しくて遊んであげられないときにも役に立ちます。
ゴーキャットゴー バルクボール チェイス
大きな鈴が入ったボール型のおもちゃです。
音が鳴るおもちゃは猫の興味を引きやすく、転がしやすいボールはドリブルして追いかけながら遊ぶことができます。
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ファンタジー レディバグ
自動で動く充電式のおもちゃです。
赤外線センサーがついており、人や猫の動きを感知して動くため、猫の狩猟本能を刺激します。
フェザー部分の交換パーツも販売しているので、たくさん遊んで羽根がボロボロになっても安心です。
④キャットタワーやキャットステップを導入する
野生時代からの習性で、猫は身の危険が少ない「高い場所」が大好きです。
キャットタワーやキャットステップを設置することで、猫が自発的に上下運動できる環境を整えてあげましょう。
ワンルームなどの狭い空間でも、キャットタワーやキャットステップがあれば、運動不足解消につながります。
キャットタワーやキャットステップは、猫の体型や年齢に合わせたものを選んであげることが大切です。
キャット どこでもタワー突っ張り Long
猫の成長や設置スペースに合わせて高さを変えることができます。
パーツの組み合わせ次第で5つのパターンに変形でき、体格や運動能力に合わせて組み替えられるため、身体能力が未熟な子猫や老猫にも安心です。
animacolle(アニマコレ) ワイドステップ【透明3枚セット】
滑りにくいアクリル素材のキャットステップです。
下地がなくても壁に取り付けられ、取り外した跡の補修も簡単なので賃貸物件でも安心して設置できます。
≪関連記事≫【おしゃれなキャットタワー】北欧インテリアに合う!おすすめ12選
⑤仲間を増やして遊び相手をつくってあげる
猫ひとりではなかなか運動することが難しい場合も、一緒に遊ぶ仲間をつくってあげることで運動する機会を増やすことができます。
わが家でも、同い年のきょうだい猫2匹と暮らしています。
小さい頃から毎日追いかけっこをしたりじゃれ合ったりしているので、(筆者の個人的な主観にはなりますが)遊び相手がいることで一定の運動量を確保できていると感じています。
ただし、多頭飼いにはそれ相応の責任と注意すべきことがあります。
ぜひ下記の関連記事も参考にしてみてください。
≪関連記事≫【猫の多頭飼い】先住猫との相性は?|もう1匹迎えるための飼い主の心構えや環境づくり
運動不足解消に役立つ「おもちゃ」の選び方
運動不足解消のために、猫の特性に合わせたおもちゃを選んであげましょう。
次の3つのポイントごとに解説します。
①年齢に合わせたもの
猫の年齢に合わせ「子猫向け」「成猫向け」「老猫向け」それぞれにおすすめのおもちゃをご紹介します。
子猫向け
子猫のうちは、じゃれたり噛んだりする遊びがメインになります。
小さい身体でも楽しめて、ひとりで遊べるようなおもちゃを用意してあげましょう。
タワーオブトラックス
3つのレーンのボールを追いかけまわして遊ぶおもちゃです。
動くボールに猫の狩猟本能が刺激されます。
身体が大きくなってくると、運動不足解消という面では物足りなくなるため、身体が小さな子猫向けの商品です。
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かむかむTOYS メッシュフルーツ パイナップル
カシャカシャと音が鳴るので、猫の興味を引きやすいおもちゃです。
誤飲の心配もなく、くわえやすい大きさなので安心して与えることができます。
コットンメッシュの素材なので、かみながらデンタルケアができるのも嬉しいポイントです。
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成猫向け
体格もしっかりしており、体力もある成猫には、自由自在に身体を動かせるような遊び方ができるおもちゃを選んであげましょう。
ぷろぺらじゃらしナチュラルフェザー
プロペラと羽根の動きが楽しい猫じゃらしです。
筆者宅でも使用しており、普段あまりおもちゃに興味のないメスの小町もこの猫じゃらしだけは食いつきが良く、たくさん遊んでくれます。
柄の長さやゴムの伸び具合もちょうど良く、プロペラなしでも楽しめる商品です。
Petstages リングトラック
横に倒してレーンを転がるボールで遊ぶこともできますが、運動量を増やすためには縦にして転がしながら追いかける遊びをさせてみましょう。
ボールの中には猫の大好きな「キャットニップ(“イヌハッカ”のハーブ)」が入っています。
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老猫向け
体力や筋力が衰えてきた老猫には、足腰に負担をかけずぎず、なおかつ筋力をキープできるような運動を取り入れることが大切です。
軽い段差で上り下りできるアイテムがあると良いですね。
段差を利用して遊ばせる場合には、ジャンプしなくても上れる20cm程度の高さが目安です。
じゃれ猫 紙鳴りガサゴソ
クラフト紙でつくられたペーパートンネルです。
老猫にとっては、トンネルの中をのぞいたり、くぐったりするだけでも刺激になり認知症予防にもつながります。
付属の猫じゃらしの動きで気を引きながら、ペーパートンネルのガサゴソ音で楽しく遊んでみましょう。
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ミケにゃんこの爪とぎベッド
おもちゃではなく爪とぎ用の商品ですが、緩やかな曲線で老猫でも身体に負担をかけずに上り下りの運動ができます。
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②「追いかける」と「捕まえる」で狩猟本能を満たすもの
運動不足解消のためには、全身運動ができる遊びをうながせるおもちゃがおすすめです。
ドリブルをしたり、筒の中を駆け抜けたり、猫じゃらしでジャンプさせたり。
「追いかけて」「捕まえる」の動作で狩猟本能を満たしてあげましょう。
ただし、飼い主に人気のレーザーポインターのおもちゃは、対象物がレーザーであるため「捕まえる」ことができません。
猫の狩猟本能が満たされずフラストレーションが溜まる可能性があるため、あまりおすすめはしません。
③誤飲しない大きさのもの
猫が楽しく安全に遊べるよう、おもちゃは誤飲しない大きさのものを厳選しましょう。
過去にSNSで話題になっていた「ウサギの毛でつくられたネズミのおもちゃ」などは誤飲しやすく、獣医師が注意喚起しています。
その類のおもちゃは種類を変えて、さまざまなタイプで市販されていますが、多くは
4~5cmと小さいサイズで猫が飲み込んでしまう可能性があり大変危険です。
また、ゴムやヒモ状上のおもちゃも、誤飲すると内臓を損傷させてしまう可能性があります。
ひとり遊びさせる際には、危険の少ないおもちゃを与えましょう。
猫じゃらしなどのヒモ状のおもちゃは、飼い主が責任を持ってしっかり管理してください。
わが家で実践している猫の運動不足解消アイデア
ここからは、わが家で取り入れている猫の運動不足解消法についてご紹介します。
筆者宅では、2019年生まれのきょうだい猫2匹(短毛種)と一緒に暮らしています。
オスの小次郎(体重5kg)とメスの小町(体重3kg)は、これまで特に肥満などを指摘されたことはありません。
運動不足解消のため、キャットタワーの設置はもちろん、日常生活の中で「自然と身体を動かせる」ように工夫しています。
①エサ場を高い位置に置く
食事の器は棚の上などの高い場所に置くことで、日頃から自然にジャンプできるようにしています。
オスの小次郎は高さ80cmにあるエサ場が好きで、メスの小町は高さ110cmのエサ場で良く食べています。
ただし、水はこぼすと困るので床に直置きです。
②通り道に障害物を設置
小さい子どもがいる筆者宅では、家の中の各所に高さ75cm程のベビーゲートを設置しています。
キッチンとダイニングの間や、階段の上り口・下り口など、動線上に障害物があるため目的の場所に行くために必ずジャンプしないと通れません。
猫の運動不足解消のために設置したものではありませんが、結果的に猫の上下運動促進に役立っています。
③階段を上り下りする習慣づくり
筆者宅は2階建てなので、猫が頻繁に階段を上り下りできる環境づくりを心がけています。
例えば飲食やトイレスペースなどは1階に確保し、2階には猫のお気に入りスペースをつくることで、居場所が1階と2階どちらかに偏らないようにしています。
また、猫じゃらしなどのおもちゃで遊ぶときも、キャットタワーや階段周辺で遊ばせて運動量を増やすようにしています。
【注】①~③の方法はいずれも「子猫~成猫期」までのやり方です。老猫には身体に負担がかかるため向いていません。
まとめ:運動不足解消のため、愛猫とのふれあいの時間を大切に
運動不足になりがちな室内飼いの猫。
人にも言えることですが、猫の運動不足は心身の健康に影響を及ぼします。
愛猫の健康づくりのためにも、飼い主が率先して猫に運動をうながしてあげたいですね。
キャットタワーやキャットステップを設置したり、運動の邪魔にならないよう部屋を整えてあげたり……といった環境づくりも重要ですが、一番大切なのは飼い主さんと猫とのコミュニケーションです。
日頃から猫の様子を注意深く観察し、一緒に遊ぶ時間をつくってあげましょう。
きっと愛猫との信頼関係がさらに深まるはずです。
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家