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【専門家監修】猫の太り過ぎは危険?チェック法やリスク・対策まとめ

目次
    この記事を書いた人
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)

    愛猫が寝ころんだ時のポチャッとしたお腹、ちょっと重たそうな歩き方…「可愛いけど、大丈夫かな?」と心配になる瞬間はありませんか?


    「避妊・去勢後は太るって聞くけど、どこまでがOKなの?」
    「太ると病気のリスクが上がるって聞いたけど…うちの子は大丈夫?」


    そんな疑問や不安を抱える飼い主さんも多いでしょう。

    猫の太り過ぎには、実はさまざまな健康リスクが伴います。

    この記事では、認定動物看護師の資格を持つ筆者が猫の適正体重・太る原因・肥満が引き起こすリスク・今日からできる対策などについて詳しく解説します。

    「ちょっと太ってきた?」と思ったら、まずは体重と体型をチェック!

    「ちょっと太ってきた?」と思ったら、まずは体重と体型をチェック!
    猫の日ごろからの体重・体型チェックは、太り過ぎに気付く・改善する・予防するための第一歩。

    まずは猫の適正体重・体型を知り、愛猫と比較してみましょう。

    猫の適正体重はどのくらい?

    一般的には、成猫と言われる1歳くらいのときの体重がそれぞれの猫の適正体重です。

    メイン・クーンやノルウェージャン・フォレスト・キャットなど大型猫の場合は1歳を超えても成長が続くことがあるため、2歳ごろの体重を適正体重とすることがあります。

    「適正体重=1〜2歳ごろの体重」と覚えておきましょう。

    現在の体重が適正体重から10〜20%上回っていたら「過体重」と呼ばれる状態です。適正体重の20%以上になると「肥満」と呼ばれ、太り過ぎということになります。

    簡単にできる愛猫の体型チェック法「ボディコンディションスコア(BCS)」

    簡単にできる愛猫の体型チェック法「ボディコンディションスコア(BCS)」
    出典元「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(環境省)

    猫の体型は上の画像の「ボディコンディションスコア(BCS)」を指標にチェックできます。

    BCSは、見た目・触診で体型を5段階評価するものです。環境省から一般公開されており、動物病院で診察などの際によく使われます。

    体重計が家になくてもチェックできるため、日頃のスキンシップの流れでぜひ取り入れてみてください。

    どうしてうちの猫は太るの?考えられる4つの原因

    どうしてうちの猫は太るの?考えられる4つの原因
    ここでは、太り過ぎの猫に考えられる原因を4つ紹介します。

    カロリーオーバー

    ちょっとの「与えすぎ」が積み重なると、カロリーオーバーで太る原因になります。

    とくに家で暮らしている猫は、基本的にエネルギーをあまり使わず省エネモードで暮らしているためカロリーオーバーになりやすいです。

    愛猫のお腹がぽちゃっとしてきたら、ごはんやおやつを与えすぎているのかもしれません。

    運動不足

    猫が太る原因の多くは摂取カロリーが消費カロリーを上回った状態が続くことにあります。

    高いところに上るような上下運動や、動くものを追いかける運動にエネルギーを使うのが猫です。

    しかし、身の周りに運動できるような場所がなく動く理由がなければ、猫は「食べて、寝て...」を繰り返す生活になるでしょう。

    太って体が重く感じると体を動かすことが億劫になり、どんどん運動不足になって太るという悪循環にも陥りやすいです。

    ホルモンバランスや加齢の影響

    避妊・去勢後は代謝が低下しがちで太りやすくなると言われています。

    また、猫も人と同じように年齢を重ねるにつれて代謝が低下1日に必要なエネルギー量も低下します。

    病気が隠れている可能性がある

    以下のような内分泌疾患が原因で太り過ぎに見える場合もあります。
    • 甲状腺機能低下症
    • 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
    • 糖尿病

    また、お腹に水が溜まる「腹水貯留」という状態や、子宮に膿が溜まる「子宮蓄膿症」、腫瘍による内臓肥大などで太って見える場合もあります。

    病気が隠れている場合は、悪化すると命に関わり危険です。

    早く治療を始めるためにも、「太り過ぎ」に加えて以下のようなサインが見られたらすぐに動物病院へ行きましょう。
    【猫の「太り過ぎ」に病気が隠れている場合の主なサイン】
    • 多飲多尿
    • おしっこの色が薄い
    • 数日~1カ月の短期間で急に太った(お腹が膨らんできた)
    • 食欲不振
    • 元気がない

    猫の太り過ぎが引き起こす病気・ケガのリスク

    猫の太り過ぎが引き起こす病気・ケガのリスク
    ここでは、猫の太り過ぎが引き起こす病気やケガのリスクをまとめました。

    関節炎(足腰に負担がかかり、歩くのがつらくなる)

    猫が太り過ぎると、足腰が体重に耐えきれない・筋力の低下などで足腰への負担が大きくなります。

    炎症がひどくなり、歩くこともつらくなって、さらに運動不足や肥満に陥ってしまう場合もあるでしょう。

    スコティッシュフォールドマンチカンは生まれつき関節が弱い傾向にあるため、とくに注意が必要です。

    糖尿病(多飲多尿・元気がなくなる危険も)

    猫のからだは、膵臓から「インスリン」と呼ばれる物質が分泌されて血糖値を調整しています。肥満傾向の猫は、このインスリンが十分な作用をしなくなることにより糖尿病を発症することが多いです。

    糖尿病では、初期症状と末期症状が大きく違います。
    【初期症状】
    • 多飲多尿
    • 食欲増進
    • よく食べるのに体重が減る
    • 細菌性膀胱炎
    • 皮膚炎
    【末期症状】
    • 嘔吐・下痢
    • 食欲不振
    • 腎機能障害
    • 白内障
    • 肝疾患
    • 毛並み・毛艶が悪くなる

    悪化すると神経障害が出たり、呼吸困難昏睡状態に陥ったりすることもあります。

    脂肪肝(急なダイエットで悪化することも)

    猫の脂肪肝(肝リピドーシス)とは、肝臓に脂肪が過剰に蓄積した状態を言います。

    太り過ぎの猫が急にごはんを食べなくなった場合に起こることが多く、ダイエット中は注意が必要な病気です。

    脂肪肝(肝リピドーシス)に関する詳しい原因・症状・危険性・対策などは以下の記事で解説しています。

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    尿路結石・膀胱炎(太るとトイレトラブルが増える)

    脂肪が代謝されると体内に「シュウ酸」と呼ばれる物質ができます。

    太り過ぎの猫の場合、脂肪の代謝が多くシュウ酸の生成が増えるため、尿路結石の一種である「シュウ酸カルシウム結石」ができやすくなるのです。

    また、結石による尿路の詰まりや肥満による尿道の圧迫が「膀胱炎」を誘発するケースも多くあります。

    尿路結石や膀胱炎の主な症状は以下のとおりです。
    • 少量頻尿
    • 尿が出にくい・痛みを伴って鳴く
    • 尿の色が濃い
    • 尿が濁っている
    • 血尿
    • 尿のニオイがキツイ
    • 陰部や腹部をよく舐める
    • 蒸発した尿がキラキラ光るように見える

    心臓病(息切れ・呼吸が荒くなることも)

    肥満猫では運動をしたときの息切れが起こりやすいです。そのため呼吸が早くなりやすく、心臓への負担も大きくなります。

    もともと心臓病を患っている子であれば、負担によってさらに症状が悪化するリスクが高いです。

    心臓が悪くない子でも、心臓に負荷がかかり続けると酸欠状態になったり、心不全に陥ったりなど、危険な状態になることがあります。

    今日からできる!猫の太り過ぎ対策6選

    今日からできる!猫の太り過ぎ対策6選
    「うちの猫、太り過ぎかも?」と思ったら...今日からできる6つの対策を紹介します。

    適切な食事管理

    まずは身近な「食事」に関する管理から。

    ごはんは低脂質・低炭水化物・高タンパクで良質なモノを選ぶといいでしょう。スーパーマーケットで買うよりも、動物病院で相談をして猫に合うごはんを選ぶのがおすすめです。

    猫は食の好き嫌いが激しい子も多いため、極端に低脂質・高繊維のごはんは食いつきが悪くなる可能性があります。

    猫の好みに合わせて選んだり、新しいごはんに猫が好きなおやつやふりかけを少量かけてあげたりなど、様子を見ながら切り替えていきましょう。

    おやつ・間食のカロリー管理

    「食事」と加えて大切なのが「おやつ・間食」の管理です。

    おやつや間食の量は、猫ごとの「1日に必要とされるエネルギー量の20%以内」が適切とされています。

    今あげているおやつのエネルギー量は適切か?今一度見直してみてください。

    おやつをあげる際は以下のポイントをおさえておきましょう。
    • 日をあけて少量ずつあげる
    • 与えた分のカロリーをごはんから減らす
    • 1日に必要な摂取カロリーから計算をして、与えていいおやつのカロリーを算出する

    年齢・猫種・ライフステージに合った摂取カロリーを把握する

    成長期・成猫・シニア猫などそれぞれの年齢・猫種・ライフステージごとに適切なカロリー摂取量は違います。

    また、体重維持・ダイエットなどそれぞれの目的によってもカロリー管理の仕方は違います。

    すべての猫に共通する明確な決まりはないため、動物病院で愛猫に合ったカロリー管理方法を相談して決めるのがおすすめです。

    定期的な健康診断で太り過ぎチェック

    猫の体重の増減は人間とは基準が違います。数百グラムの違いでも猫にとっては大きな変化です。

    「病院で定期的に体重や体型を診てもらう」というのは、太り過ぎ対策に効果的でしょう。

    また、定期的な検診で病気や身体の異変にも気付いてもらいやすいです。

    できれば1カ月に1回の頻度で簡単な検診を受けさせてあげましょう。

    おもちゃ遊びやスキンシップで楽しく運動量UP

    おもちゃ遊びやスキンシップは、運動量が上がって消費カロリーが増えるだけではなく、おやつなどのご褒美の代わりにもなります。

    ストレス発散にもなるため心の健康にもつながるでしょう。

    おすすめのおもちゃは以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

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    キャットタワーなどで運動しやすい環境づくり

    猫の太り過ぎ対策には「食事やおやつのカロリー管理」が大切ですが、運動でカロリーを消費したり筋肉量を増やして代謝をアップさせるのも効果的です。

    無理して運動をさせるのではなく、猫が自然と興味を示すような「運動しやすい環境づくり」をしていきましょう。

    以下の記事では人気の商品をたくさん紹介しています。ぜひチェックしてみてください。

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    猫のダイエット成功のコツと注意点

    猫のダイエット成功のコツと注意点
    ここでは猫のダイエット成功のコツと注意点をまとめました。

    太り過ぎの猫に急激なダイエットはNG

    猫の急激なダイエットは命の危険をもたらします。以下のようなダイエット法は避けましょう。
    【猫のNGダイエット法】
    • 猫が好まず食べないキャットフードの置きっぱなし
    • ごはんの量を極端に減らす

    太り過ぎな猫が急激なエネルギー不足に陥ると「脂肪肝(肝リピドーシス)」という病気を発症することがあります。肝臓に脂肪が蓄積し、食欲不振・嘔吐や下痢・脱水・黄疸などの症状をもたらす病気です。

    「食べないダイエット」ではなく「健康的に食べるダイエット」を心がけましょう。ダイエット中は、ちゃんとごはんを食べているのか?ということもよく見てあげてください。

    おやつを少しずつ減らしてみる

    おやつは「あげない」のが健康上いちばんいい方法です。

    しかし、普段からおやつをあげている場合いきなりやめるのは難しく心苦しさもあるでしょう。

    そのため「少しずつ減らす」ということを心がけてみましょう。例えば以下のような減らし方があります。
    • ちゅーるを1回1本から1回半分にする
    • クッキーなどのおやつは小さく割り、数回に分けてあげる
    • おやつを普段のキャットフードに置き換えてみる

    一気に減らすのではなく、1週間・1カ月などゆっくりのペースでトライしてみてください。

    焦らず適切な減量ペースを保つ

    目標体重を設定した際には、1週間で体重の1%減を目安に、焦らず減量を目指しましょう。

    また「停滞期はあるものだ」と知っておくことも重要です。停滞期が来ても焦らず、ダイエット時のごはんの量をキープしていきましょう。

    なお、ダイエット中は月一程度で獣医師さんにダイエットの経過を診てもらいながら、相談をして進めていくのがおすすめです。

    今日からできる”ちょっとした工夫”が、愛猫との未来を変える

    「太り過ぎは健康的にも良くない」

    そう分かっていながらも、愛猫の愛おしさが誘惑となり、つい甘やかしすぎてしまう飼い主さんは多いでしょう。

    しかし「太り過ぎが原因で病気やケガをしてしまった」となってからでは、後悔が襲ってくるはずです。

    愛猫と長く健康的に一緒に暮らすために、まずはできることから。ちょっとした工夫から太り過ぎ対策やダイエットを始めていきましょう。

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    舘 明奈
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