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「猫アレルギーでも、大好きな猫と暮らしたい」
そんな願望を抱いてこの記事にたどり着いた方へ。
実際に猫アレルギーは「治らない」と言われていますが、症状を軽減・抑制しながら猫と一緒に暮らしている飼い主さんは意外と多いです。
この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「猫アレルギーの原因・症状・対策」や「猫アレルギーでも猫と一緒に暮らす工夫」を解説します。
猫アレルギーは治るのか?

結論、猫アレルギーの完治は難しいと言われています。
猫アレルギーでよく見られる症状にはくしゃみ・かゆみ・鼻水・目の充血や腫れなどがありますが、これらは体内の免疫がアレルゲンに過剰反応することで起こる症状です。
免疫がアレルギー反応を起こすと、アレルゲンに遭遇するたびに反応が起こりやすくなります。
ある日突然アレルギーが治ることは稀にありますが、ほとんどの人は猫アレルギーの完治が難しいのが現状です。
猫アレルギーの原因
猫アレルギーでは「猫の毛が原因だ」と考えられがちですが、実際猫の毛自体にはアレルゲンが含まれていません。アレルゲンとなるのは、猫のフケ・汗・涙・体液などに含まれる「Fel d 1(フェルディーワン)」というタンパク質です。これらのアレルゲンが直接、または猫の毛に付着した状態で体内に侵入してきたり体表に触れたりすることでアレルギーを引き起こします。
猫アレルギー発症の原因は「遺伝的要因」と「環境要因」に分けられます。
【遺伝的要因】
両親や祖父母がアレルギー体質の場合、子どもにも遺伝しやすい。
両親や祖父母がアレルギー体質の場合、子どもにも遺伝しやすい。
【環境要因】
もともとアレルギーがなくても、アレルゲンに長く触れていると、ある時突然発症することがある。
もともとアレルギーがなくても、アレルゲンに長く触れていると、ある時突然発症することがある。
猫アレルギーの主な5つの症状

ここでは猫アレルギーの主な5つの症状をまとめました。
【呼吸器系の症状】
・くしゃみ
・鼻水
・喘息
猫の毛やフケを吸い込んでしまい、鼻や気道の粘膜に付着することで発症します。・鼻水
・喘息
症状の程度には個人差があり、くしゃみや鼻水で済む場合もあれば、気管が腫れて狭まることで息苦しさを感じる場合もあります。
【皮膚症状】
・かゆみ
・湿疹
・蕁麻疹
・皮膚炎
皮膚には異物や外敵から体を守る「バリア機能」というものが備わっています。・湿疹
・蕁麻疹
・皮膚炎
アレルギー症状が皮膚に出る人の場合、皮膚にアレルゲンが触れることによってバリア機能が壊れ、炎症を起こすのです。
症状の程度には個人差がありますが、重症な人では皮膚が厚く・硬くなる人もいます。
【目の症状】
・かゆみ
・充血
・充血
・涙
・まぶたの腫れ
アレルゲンが目に入ることで目の表面の「結膜」が炎症を起こし、症状が現れます。・充血
・充血
・涙
・まぶたの腫れ
症状が重い人だと、白目の部分がゼリー状にブヨブヨと膨らんできたり、まぶたの腫れで目が開けられなくなったりします。
【消化器症状】
・吐き気
・下痢
・嘔吐
猫アレルギーが重症化してくると、上記のような消化器症状が見られることがあります。・下痢
・嘔吐
猫アレルギーで消化器症状が出る人は稀ですが、誰にでも起こりえます。
軽視せず、早めに病院で診てもらい治療を進めていきましょう。
【その他の症状】
・めまい
・動悸
これらの症状が出たらかなり重症だと判断し、早急に病院を受診してください。・動悸
猫アレルギーで命を落とすことは少ないですが、重症になるほど命に関わるリスクは高まります。
猫アレルギーが悪化しやすい人の特徴

猫アレルギーが悪化しやすい人には以下のような特徴があります。
【アレルギー体質の人】
花粉症・ダニアレルギー持ち・他の動物アレルギー持ちなど、アレルギー体質の人は猫アレルギーが悪化しやすいです。
また、両親や祖父母がアレルギーの場合も遺伝してアレルギー体質になりやすく、悪化しやすいと言われています。
【室内環境が整っていない人】
猫の毛やフケが残りやすい室内環境にいる人は、アレルゲンに触れる機会が多く悪化しやすいです。
掃除をこまめにしない・毛が付きやすい布製の家具を多く使用しているなどが挙げられます。
猫アレルギーの悪化を防ぐポイント

猫アレルギーの悪化を防ぐには「アレルゲンに触れる機会を減らす」「アレルギーに対する治療を行なう」という2つの面から対策すると効果的でしょう。
猫アレルギー対策をするときは、以下の3点をポイントに行なってみてください。
・こまめな掃除・換気でアレルゲンを減らす
・アレルゲンに触れた後の対処
・医師の指導のもとで治療を続ける
・アレルゲンに触れた後の対処
・医師の指導のもとで治療を続ける
「猫アレルギーでも猫と暮らすにはどうすればいいのか?」については、後の項で工夫・対策を詳しく解説します。
猫を家族に迎える前にやってほしいこと

アレルギー症状の有無に関わらず、猫を家族に迎える前にぜひやって欲しいことをまとめました。
事前にアレルギー検査をする
症状に心当たりがなくても猫アレルギーの検査は事前にしておくのがおすすめです。総合病院・大学病院のアレルギー科や、皮膚科でも猫アレルギーの検査ができます。費用は3,000〜6,000円ほどで受けられるところがほとんどです。
また、検査では陰性でも実際に猫と触れ合うことで出るアレルギー症状もあるため、猫と触れ合う機会を何度か作るのもいいでしょう。「接触テスト」という方法で、実際にさまざまなアレルギー検査でも使われることがあります。
猫カフェや、猫を飼っている知人の家などで実際に触れあってみてください。
猫アレルギーだと診断されてしまったら
「猫アレルギーだと言われてしまった...それでも猫と一緒に暮らしたい!」そう、切に願う方も多くいるはずです。
実際、重篤な症状ではなければ猫アレルギーの方でも猫と暮らすことはできます。
まずは、自身のアレルギー症状についてきちんと理解し、どういう場合に発症しやすいかという傾向を掴んでおくとよいでしょう。
重度のアレルギー症状がある方だと、どんなに治療をしても改善しない場合があります。治療ではどうしようもできず、結局猫を手放す...なんてことはしたくないはず。
診断を受けても、焦らず、まずは自身の治療や環境の整備を最優先に考え、医師とよく相談し、周りの理解を得たうえで、猫を家族に迎え入れるかどうかを決めましょう。
猫アレルギーでも一緒に暮らす5つの工夫・対策

「猫アレルギーだけど、猫と暮らしたい!」という方へ。
ここでは5つの工夫や対策をまとめました。
1.猫との接し方の工夫
2.家の掃除を日ごろから取り入れる
3.猫のケアも大切
4.空気を清潔に保つ
5.居住環境の工夫
1.猫との接し方の工夫
猫アレルギーがある人は、猫に触れた後の自身のケアが大切です。猫と触れ合った後は、付着した毛を取り除き、手洗いうがいをこまめに行なうといいでしょう。風邪予防がてらマスクを着用し手洗いうがいをこまめにすることも、アレルギー対策になると言われています。
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2.家の掃除を日ごろから取り入れる
アレルゲンを溜めない習慣として、日ごろから家の掃除をするといいでしょう。毎日掃除機をかけるのはもちろん良いことですが、少し手間がかかる場合は以下のような簡単な掃除でも効果的です。
・お掃除ワイパーで床を掃く
・お掃除ロボットを稼働させておく
・コロコロ粘着シートを使う
・お掃除ロボットを稼働させておく
・コロコロ粘着シートを使う
コロコロ粘着シートやお掃除ワイパーは、各部屋に置いておくと、サッと手に取って掃除ができて楽になるかもしれません。
ぜひ飼い主さんが続けられるお掃除の習慣を見つけてみてください。
〈関連記事〉
ペットのいる家用の掃除機6選【毛が絡む悩みからサヨナラ】
3.猫のケアも大切
猫アレルギーの発症を抑えるためには、猫のケアも大切です。例えばブラッシング。ブラッシングは、日ごろから行なうことで抜け毛を減らせます。頻度は以下を参考にしてみてください。
【毛の長さ別ブラッシングの目安頻度】
✔短毛種:週に2~3回程度
✔長毛種:毎日、または2日に1回程度
✔短毛種:週に2~3回程度
✔長毛種:毎日、または2日に1回程度
ブラシを嫌がるのであれば「ゴム手袋」でも代用可能です。100均のゴム手袋をして手で猫を撫でてあげると、意外と抜け毛がごっそり取れます。手軽な方法なので、ぜひ試してみてください。
猫はセルフグルーミングで体をきれいにしているため、完全室内飼育で短毛の猫ならシャンプーはほとんど必要ありませんが、月1回の頻度でシャンプーをしてあげられたら理想的です。
しかし、猫は体が濡れるのを嫌がる傾向にあるため、様子を見て行いましょう。もしシャンプーが難しければ、その分しっかりブラッシングをしてあげましょう。
猫に使えるおすすめのブラシは以下の関連記事で紹介しています。
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4.空気を清潔に保つ
空気中に漂っているアレルゲンを素早く除去することもアレルギー対策になります。空気を丸ごときれいにするには「HEPAフィルター」という高性能のフィルター付き空気清浄機の使用がいいでしょう。
「IQAir」というメーカーの空気清浄機や、VeSyncの「Levoit Vital」という空気清浄機は、アレルギーを持つ方に人気があります。ぜひチェックしてみてください。
5.居住環境の工夫
居住環境の工夫も、アレルギー発症の軽減に効果的です。例えば以下のような工夫があります。
・猫と寝室を分ける
・猫が入れない部屋をつくる
・猫が入ってきてほしくないところに柵を設置する
・キッチンには猫を入れない
・カーテンを定期的に洗ってアレルゲンを除去する
上記のような工夫で「アレルゲンとの接触機会を減らせる場所は減らしておく」ようにしましょう。・猫が入れない部屋をつくる
・猫が入ってきてほしくないところに柵を設置する
・キッチンには猫を入れない
・カーテンを定期的に洗ってアレルゲンを除去する
また、猫の毛は布製品につきやすいため、なるべく布製品を置かないというのも対策としておすすめです。以下を参考にしてみてください。
・カーテンをブラインドに替えて掃除をしやすくする
・布製のカーペットやラグを敷かない
・ソファーやクッションは布製ではなく合皮製のものなどに替える
居住環境の工夫としておすすめの柵や侵入対策グッズなどは、以下の記事で詳しく紹介しています。・布製のカーペットやラグを敷かない
・ソファーやクッションは布製ではなく合皮製のものなどに替える
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猫アレルギーの症状を軽減・抑制する治療方法がある

猫アレルギーは完治が難しい病気ですが、継続的な治療によって、アレルギーでも猫と一緒に暮らしている人は意外と多くいるのです。
ここでは代表的な2つの治療方法を紹介します。
【薬物療法】
アレルギー症状を緩和する薬を使う治療方法です。
身近なもので言えば、ドラッグストアで気軽に購入できる市販薬があります。アレルギー用鼻炎薬・抗アレルギー薬・アレルギー用目薬・点鼻薬など、症状に合わせて選ぶと良いでしょう。ドラッグストアに薬剤師さんが常駐しているなら相談してみてもいいかもしれません。
症状が緩和されない・重症化しているなどの場合は早急に病院で診てもらい、医師に薬を処方してもらいましょう。
【減感作療法(げんかんさりょうほう)】
アレルゲンに慣れて症状を抑える方法です。日本ではまだ普及が広くありませんが、世界的には「アレルギー疾患に対する唯一の原因根治治療法」とも言われています。
しかし、誰でも受けられるわけではなく、あくまで医師が「治療対象にできる」と判断した場合にのみ受けられるものです。
猫アレルギーでも飼いやすい猫種はいる?

実は、猫アレルギーの方でも飼いやすいと言われる「アレルゲンが少ない猫種」がいます。
バリニーズ![]() |
比較的低アレルゲン |
サイベリアン![]() |
アレルゲンの分泌が少ない個体が多い |
ベンガル![]() |
毛が短く、唾液の付着が少なめ |
ただし個体差があり、必ずしも「アレルゲンが少ない」というわけではありません。
まずは、猫を飼う前にアレルギー反応を検査しておくのがおすすめです。
猫を迎え入れる前に、まずはしっかりアレルギーのリスクへの理解と対策を
猫アレルギーでも猫と一緒に暮らすことはできます。しかし、症状の度合いによっては気を付けなければならないことがあるでしょう。「猫と一緒に暮らしたいから」と安易に迎え入れ、一緒に生活できないほどにアレルギー症状が悪化したら、猫とのお別れを選ばざるを得ないかもしれません。
「猫アレルギーがある・アレルギーの疑いがある」なら、必ず主治医に相談をしましょう。それが、猫のためにもなります。
愛猫と飼い主さんの暮らしがより良い時間になるよう、この記事が参考になれば幸いです。
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この記事を書いたペットとの暮らしの専門家