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【専門家監修】犬におやつをあげすぎると病気を招く?6つのリスクと1日の適正量

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目次
    この記事を書いた人
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)

    ダメだとわかっているのに、あげすぎてしまう...。

    「かわいいから」

    「おやつをあげれば言うことを聞いてくれるから」

    そうやって、愛犬のおやつをやめられない・減らせないことに罪悪感を覚える飼い主さんは多いでしょう。

    おやつのあげすぎは、肥満のほかにもさまざまな病気問題行動の原因に。

    けれど、欲しがる理由おやつ以外のご褒美に替える方法を知ることで、病気などのリスクを減らせます。

    この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「犬がおやつを欲しがる理由」「病気やリスク」「おやつとの上手な向き合い方」などについて詳しく解説します。

    愛犬がおやつを欲しがるのはなぜ?

    愛犬がおやつを欲しがるのはなぜ?

    ついあげてしまうおやつ。愛犬が永遠に欲しがるのはなぜか?

    そこには大きく分けて2パターンの理由が隠れています。

    「おやつをもらえる方法」を愛犬が学習している

    犬たちは飼い主さんの顔色・声色・行動・反応などをよく見て学習しています。

    • 何をしたらおやつがもらえるのか?
    • どのタイミングで飼い主さんがおやつを準備するのか?

    これは、犬の行動学でいう「オペラント条件付け」というものに基づきます。

    犬たちは賢いため、飼い主さんがおやつをくれる時をパターン化して覚え、タイミングを見てアクションを起こしているのです。

    飼い主さんの行動や反応が、愛犬の行動を作っているかも?

    「かわいいからついあげちゃう」
    「犬たちは毎日同じものしか食べられなくてかわいそうだ」

    そういった飼い主さんのやさしさ、罪悪感、エゴなどが犬に“おねだり”を覚えさせているかもしれません。

    誰のせいでもなく、愛犬が家族にとって愛おしくて大切な存在だからこそ、その想いが「おやつを与える」という行動につながっているのです。

    だからこそ重きを置きたいのは「おやつ禁止」ではなく「与え方の見直し」のところにあります。後の項で「与え方」について解説します。

    愛犬のおやつのあげすぎが招く6つの病気やリスク

    愛犬のおやつのあげすぎが招く6つの病気やリスク

    ここでは、代表的な6つの病気やリスクについてまとめました。

    偏食・栄養バランスの乱れ

    犬たちはおやつの強い香りや旨味を知ってしまうと、ドッグフードを食べなくなることがあります。

    その結果、栄養バランスが乱れて体調を崩すことも多いです。

    身体の不調から始まり、肥満・消化器トラブル・肝臓障害などの病気につながると、寿命にも影響します。

    肥満が糖尿病・心臓病・関節障害を引き起こす

    世界的に見てもおうちで飼われている犬の約40%が肥満傾向であるといわれています。

    肥満はさまざまな病気の入り口です。

    【肥満によって引き起こされやすい病気と特徴】

    糖尿病

    多飲多尿、食べているのに体重が減る、尿のニオイが甘いなどの症状がみられる。

    症状が進むと、食欲・元気消失、嘔吐・下痢、神経障害や昏睡などに陥る。

    心臓病

    咳・疲れやすさ・腹水や胸水が溜まる・むくみ・チアノーゼ・発作などの症状が特徴としてみられる。

    関節障害

    肥満による身体の重さや歩き方の変化が、関節軟骨を変性させたり関節に過度な負荷をかけ続けたりすることで痛みを生じる。

    運動や散歩を嫌がる、背中が丸まる、腰を触ると嫌がるなどのサインが特徴。

    病気が進行すれば、治療もダイエットも長期的な戦いになります。愛犬のためにも、肥満に近づく習慣を改善することが大切です。

    消化器トラブル

    高脂肪・高カロリーのおやつは胃腸に大きな負担をかけます。

    消化不良になり嘔吐・下痢などの消化器トラブルを引き起こすことも。

    嘔吐や下痢は身体の水分を奪うため、脱水に陥ることもあります。

    肝臓障害

    肝臓は、体内の老廃物の排除や有害物質の解毒などを担うデトックス臓器です。

    余分な脂肪や糖、過剰なタンパク質、添加物などは肝臓を過剰に働かせ、負担をかけます。

    軽度なら無症状であることが多いですが、進行すると以下のようなさまざまな症状が出てきます。

    • 下痢・軟便
    • 吐き気・嘔吐
    • 多飲多尿
    • 食欲不振
    • 元気消失
    • 黄疸(歯茎や白目など、粘膜が黄色くなる状態)

    負荷がかかり続けると肝臓が線維化し機能しなくなる「肝機能不全」になり、危険な状態に陥ってしまいます。

    アレルギー発症につながる

    おやつの中に含まれるアレルギーの原因物質が、食物アレルギーを引き起こす場合があります。

    例えば、牛・鶏・卵・乳製品などが挙げられるでしょう。

    今までは問題がなくても、おやつで頻繁に与えることでアレルギー発症の引き金になることがあります。

    ストレスや依存による問題行動の増加

    おやつのあげすぎは心にも影響があることを忘れてはいけません。

    例えば以下のような影響が考えられます。

    • おやつへの執着・ストレス
    • わがままになる
    • コマンドを聞かなくなる
    • 飼い主への依存・執着が強くなり、分離不安に発展する

    たかがおやつ1つ。

    しかし、その積み重ねが愛犬の問題行動を引き起こすスイッチになり、飼い主さんでは手に負えなくなることもあるのです。

    犬のおやつは「与え方」が重要

    犬のおやつは「与え方」が重要

    おやつのあげすぎは病気や問題行動などにつながりますが、おやつ自体が「悪」ということではありません。

    大切なのは「与え方」です。

    ここでは、犬のおやつの与え方について見直していきましょう。

    1日のおやつの適量と回数の目安

    1日のおやつの適量は「1日に必要な総カロリーの10%以内」だといわれています。

    回数は“1日2〜3回以上に分けて与える”ようにしましょう。

    以下に「1日に必要な総カロリー(DER:1日当たりのエネルギー要求量)」の求め方を記載しました。少しややこしい計算なので、電卓を使って求めてみてください。

    ①まずはRER(安静時のエネルギー要求量)を求める
    【RER=体重(kg)の0.75乗×70】

    これを電卓で打ち込む場合
    【体重(kg)×体重(kg)×体重(kg)=√√×70】で出た数字がRER

    (例)体重6kgの犬の場合
    6×6×6=216
    216に√√=3.833...
    3.833...×70=268.35…
    RER=268.35

    ②RERと「活動係数」を用いてDER(1日当たりのエネルギー要求量)を求める
    【DER=RER×活動係数】

    活動係数とは、犬ごとのライフステージ・生活環境・年齢・健康状態・避妊去勢の有無など、現在の活動状態ごとに違うエネルギーの必要量を求めるために決められた数値

    成犬 活動係数
    避妊・去勢をしていない成犬 1.8
    避妊・去勢済みの成犬 1.6
    肥満傾向 1.4
    減量が必要・減量中の犬 1
    体重増加が見込まれる・体重増加が必要な犬 1.2~1.4
    高齢犬 1.4
    妊娠1~4週まで 2
    妊娠5~6週まで 2.5
    妊娠7~8週まで 3
    産後授乳期 4.0~8.0

    子犬 活動係数
    離乳期~3か月 3
    4か月~9か月 2.5
    10か月~1歳まで 2

    (例)体重6kg避妊・去勢済みの成犬の場合
    268.35(RER)×1.6=429.36
    DER(1日当たりのエネルギー要求量)=429kcal

    ここで出たDERの10%分(6kgの避妊・去勢済み犬なら42.9kcal)が「1日のおやつの適量」になる。

    愛犬におやつをあげすぎないための工夫

    家族間での理解とルールの統一も大切です。

    「おやつのリスク」「愛犬がおやつを欲しがる理由・習慣」を理解すること。

    そのうえで「誰が・いつ・どれくらい」あげるかを共有しておくといいでしょう。

    おやつ以外で愛犬を満たす5つの方法

    おやつ以外で愛犬を満たす5つの方法

    本当に愛犬が喜ぶのは「飼い主さんとの時間」であることを忘れてはいけません。

    ここでは、おやつ以外で愛犬を満たす5つの方法をまとめました。おやつを減らしていく計画の中にぜひ組み込んでみてください。

    散歩の時間やコースを工夫する

    毎日の散歩がマンネリ化していませんか?

    散歩の時間はワンちゃんたちにとってストレス発散や気分転換にもなる大切な時間です。

    散歩の時間やコースを工夫して、愛犬の好奇心を満たす時間をしっかり確保してあげましょう。

    散歩の適切な時間は犬種により異なりますが、以下の目安を参考にしてみてください。

    小型犬(体重10㎏未満):1回20~30分 / 1日1~2回
    中型犬(体重10~20kg):1回30~60分 / 1日2回
    大型犬(体重20kg以上):1回30~60分 / 1日2回



    愛犬が喜ぶ遊びをする

    ボール遊び・引っ張り合いっこなど、愛犬が「楽しい」と感じる遊びを積極的に取り入れてあげましょう。

    形状がバラバラのおもちゃセット

    例えば上の画像のような形状がバラバラのおもちゃセットがおすすめ。

    ロープボールやフリスビーのようなディスク型ロープ、噛み心地が癖になるトゲトゲ付きの投げ輪など、愛犬の気分や好みに合わせて遊べるお得なセットです。

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    知育玩具などでおやつをあげるアイテムを工夫

    頭を使うおもちゃは、ワンちゃんにとって満足感が高いです。

    おやつやドッグフードを入れられる知育玩具を使うといいでしょう。

    KONG

    フードを入れられる知育玩具の定番といえばこちらの「KONG」です。

    噛み心地やくわえやすさがワンちゃんたちの好みにマッチしやすく、中におやつやフードを詰めて与えれば長時間夢中にさせられます。

    サイズのバリエーションが豊富なため、愛犬の成長やサイズに合わせて選んでください。

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    声掛け・アイコンタクト・スキンシップ

    ワンちゃんたちは「飼い主さんに気にかけてもらえている」と感じるとうれしくなります。

    声掛け・アイコンタクト・スキンシップは日頃から取り入れ、飼い主さんから愛犬への愛情表現をたっぷりしてあげましょう。

    ただし愛犬が嫌がることはしないように。

    表情カーミングシグナル(ストレスを感じたときに出すサイン)など、愛犬の様子を見ながら心地よいコミュニケーションを取っていきましょう。

    おやつではなく「言葉」で褒める

    「いい子だね〜」「上手だね〜」というような“愛犬がうれしい言葉”を使って褒める習慣を作っていきましょう。

    褒めるタイミング声のトーンも大切です。

    飼い主さんが褒めたくなるようなことをしたら“すぐに褒める”こと。

    マテ・オスワリなどのコマンドを出すときよりも“声のトーンを高くして褒める”ことを意識していきましょう。

    愛犬の1日のおやつ量を減らしていく3つのステップ

    愛犬の1日のおやつ量を減らしていく3つのステップ

    おやつは本来「ゼロにする」のがベストです。

    「いずれはおやつをゼロにしたい」と考えているなら、これから紹介する3つのステップを参考におやつを減らしていきましょう。

    ①現状把握

    まずは「今どれくらいあげてるのか?」を見える化しましょう。

    おやつを与えたタイミングや量をメモしたり、おやつが入っている容器を1日の始めと終わりに計量してみたり。

    現状を知ることで無理なくおやつを減らしていく計画が立てやすくなります。

    ②1回量を少しずつ減らす

    今までおやつを食べていたワンちゃんがいきなりおやつゼロになると、それがストレスになり問題行動につながる可能性があります。

    そのため「愛犬にバレないレベルで少しずつ減らす」のがポイントです。

    例えば、ビスケット1つだったのを4分の3・半分・3分の1・4分の1…というように、1週間間隔で減らしていくとか。

    その流れでいずれは「おやつの周りに付いていた粉を舐めさせるだけ」にしてみるとか。

    「愛犬にバレないようにおやつを減らすゲーム」のような感覚ですると面白いかもしれません。

    ③ご褒美を「おやつ→言葉や遊びの時間」に置き換えていく

    ②で1回量を減らしながら、おやつを「言葉や遊びの時間」に置き換えていくのもいいでしょう。

    1日5回に分けてあげていたのなら、そのうちの1回は「遊び」に置き換えたり「えらいね〜」などの「言葉掛け」に置き換えたりといった要領で。

    愛犬が喜ぶ声掛けは何か?やりながら観察して見つけてみましょう。

    また、普段からおもちゃ遊びや散歩中の声掛けなどで、おやつ以外での愛犬のうれしい時間を増やしていくことも大切です。

    おやつへの意識が、愛犬の健康を守る第一歩

    おやつを減らす=愛情を減らすことではありません。

    おやつ以外にも、愛犬を褒めたり愛犬に愛情を伝える方法はたくさんあります。

    愛犬の健康を守るためにも、まずは「今おやつをどのくらい与えているのか?」現状把握から始めてみましょう。

    現状把握をしたうえで、与え方や減らし方などを工夫してみてください。

    おやつへの意識に目を向け、愛犬の健康を守っていきましょう。

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)