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「うちの愛犬、なんだか太ってきていないか?」
そう思ってこの記事にたどり着いた方もいるでしょう。
ぽっちゃりぷにぷにボディの犬は可愛さもありますが、犬の肥満は「病気やけがのリスクが高まる」と言われています。生活の質(QOL)を落としたり寿命を縮めたりする原因にもなるのです。
この記事では、認定動物看護師の資格を持つ筆者が「犬の太り過ぎのリスクや予防法」「愛犬の体型チェック方法」などについて解説します。
まずは愛犬の体型をチェックしてみよう

出典元「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」(環境省)
犬の体型は上の画像の「BCS(ボディコンディションスコア)」を指標に見ることができます。
犬種・性別・年齢などによって体格に違いがあるため、平均体重で「肥満かどうか」判断するのは曖昧になる場合もあるでしょう。
そんなときに便利なのがBCSです。見た目・触診で体型を5段階評価するもので、環境省から一般公開されており動物病院でも診察などの際に使われます。
遺伝的に太りやすい犬種もいる
- ラブラドール・レトリーバー
- ゴールデン・レトリーバー
- バセット・ハウンド
- チワワ
- キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
- コッカー・スパニエル
- ビーグル
- シェットランド・シープドッグ
- パグ
- スコティッシュ・テリア
- ケアーン・テリア
- ミニチュア・ダックスフンド
犬の太り過ぎが引き起こす病気・ケガのリスク

ここでは、太り過ぎの犬によく見られる病気やケガをまとめました。
足腰への負担による関節疾患
太り過ぎによる足腰への負担は以下のような関節疾患の原因になります。- 椎間板ヘルニア
- 膝蓋骨脱臼
- 股関節形成不全
- 十字靭帯断裂・損傷
犬が肥満になると体重に足腰が耐え切れなかったり、筋力の低下が起こったりします。そのため、足腰への負担が大きくなり関節疾患を発症するのです。
呼吸器への負荷による疾患
脂肪による圧迫で呼吸器に負荷がかかった場合、以下のような疾患の原因になります。- 気管虚脱
- 短頭種気道症候群
- 喉頭麻痺
上記の疾患は肥満で発症しやすい傾向がありますが、肥満ではなく犬種・遺伝が原因であることも多いです。パグやブルドッグなどが分かりやすい例でしょう。「フガフガ」と呼吸が常に荒いのは、生まれつき気管や鼻の穴が狭かったりして呼吸が苦しくなりやすいためです。
生まれつきの呼吸障害に「運動不耐症」が伴い、運動不足から肥満につながることも多くあります。
代謝系の疾患リスク増加
太り過ぎによる代謝系の疾患は命に関わる場合もあるため要注意です。例えば以下のようなものが挙げられます。- 脂質異常
- 急性膵炎
犬も人と同じように、年齢を重ねるにつれて代謝が落ちると言われています。
代謝系の疾患は、代謝が落ちてきた中年〜老年の肥満犬に起こりやすいです。
皮膚トラブル・免疫力の低下
犬の太り過ぎでは以下のような皮膚や免疫力へも影響することがあります。- 膿皮症
- マラセチア性外耳炎
疫学調査によると、体脂肪率37%以上の犬では上記のような皮膚トラブルのリスクが高いというデータが出ています。
(参照:肥満が犬や猫にもたらす弊害)
「皮膚にしわができやすくなる=しわに湿気や汚れが溜まりやすい」という状態だとイメージしてみてください。
また、皮膚トラブルによって皮膚のバリア機能が壊れやすくなるため、免疫力低下による感染症のリスク増加もあるでしょう。
排尿障害に関わる泌尿器疾患
犬の太り過ぎは以下のような泌尿器疾患を引き起こすこともあります。- シュウ酸カルシウム尿石症
- 尿道括約筋機能不全(USMI)
とくに「シュウ酸カルシウム尿石症」になる子は多いです。
脂肪が代謝される際には「シュウ酸」という物質ができます。摂取する脂肪分が多かったり体内の脂質異常が起きていたりすると、その分代謝される脂肪も多いため、シュウ酸カルシウム尿結石ができやすくなるのです。
また、肥満による泌尿器疾患は尿失禁をもたらす原因にもなります。
犬の太り過ぎによる「寿命」との関係性

ある研究では「肥満犬と比べて標準体型の犬の平均寿命は平均1.8年長い」というデータが取られています。
(参照:14 年にわたる犬の寿命に関する研究)
これは、48頭のラブラドール・レトリーバーを対象として「完全食を与えるグループ」「減量食を与えるグループ」に分けて生涯をモニタリングした研究です。
結果としては、完全食を与えていた犬の平均寿命は11. 2年、幼少期から減量食で適性体型をキープした犬の方の平均寿命が13年というようになりました。
また、減量食で食事管理をしたグループの方が病気を発症するリスクも低かったようです。
あくまで個体差はありますが、肥満はさまざまな健康リスクを招く原因になるため寿命を縮めることに関係しているでしょう。
なぜ犬は太りやすいの?陥りがちな4つの原因

ここでは、犬が太りやすい原因を4つ紹介します。
おやつやごはんの量が「感覚任せ」になっている
「ちょっと多め」や「今日くらいおやつあげてもいいか」が積み重なることは、よくある原因の一つです。家族間で愛犬へのごはんやおやつのルールが統一されていないとそれが落とし穴になることもあります。
おやつは1日何個までにするのか?ごはんは何グラムなのか?あらかじめしっかり決めておきましょう。
また、一般的には「おやつは1日のごはんの量の10%以内に収める」が基本です。あげたおやつの分、ごはんのカロリーを改めてバランスを調整しましょう。
散歩や運動量が足りていない
犬の運動不足問題は室内飼いの犬や飼い主さんが共働きである世帯に多いです。日々の散歩・運動時間が短くなると、どうしても運動不足気味になるでしょう。
犬の運動不足は肥満を加速させる原因のひとつです。愛犬にあわせた運動量をできるだけ保ってあげましょう。散歩時間の目安や運動アイデアについては後の項で説明します。
また、ペットショップで「この子のような小型犬はお散歩の必要がありません」と言われた方は要注意です。犬の心身の健康に散歩や運動は欠かせません。聞いたことがある方や、これから犬を迎え入れようと思っている方は注意してください。
避妊・去勢後の代謝低下を考慮していない
避妊・去勢後では、前よりも代謝が落ちがちです。以前と同じ量のごはんをあげていると、カロリー過多になり太り過ぎの原因になります。愛犬の避妊・去勢手術後は食事量や1日の摂取カロリー・運動量などの見直しをしましょう。
「ぽっちゃり=可愛い」という誤ったイメージ
最近では、SNSで話題になるようなぽっちゃり犬もいます。ダメだと分かっていながらも「可愛いから、いいか」と許してしまう方もいるでしょう。しかし犬の太り過ぎは健康上には悪いです。
大切な愛犬と長く元気に過ごしたいのであれば、愛犬のためにも食事・運動・健康管理を見直しましょう。
太り過ぎを防ぐための食事管理と運動習慣の作り方

ここでは、おすすめの方法を5つ紹介します。
体重や体型チェックを習慣化
いちばん手軽で続けやすい方法として日々の体型チェックがあります。愛犬とコミュニケーションをとるときに、冒頭で紹介したBCS(ボディコンディションスコア)を参考に体型を「見る・触る」でチェックしてあげましょう。
最初は難しく感じますが、毎日チェックしていくと次第に感覚が掴めてきます。最初から完璧を目指さず、徐々に感覚を掴んでいきましょう。
体重記録アプリや写真記録を活用するのもおすすめです。
また、動物病院での定期的な検診も受けていきましょう。
ごはん・おやつの選び方と与え方のポイント
ごはんは「低カロリー・高たんぱく」のものを選ぶといいでしょう。犬によって体質が異なったり持病を抱えていたりする場合もあるため、動物病院で相談をしてからごはんを決めるのがおすすめです。
また、おやつは「与えない」が健康上いちばん良いです。しかし「ご褒美で少しくらいはあげたい」という場合は以下のポイントを押さえましょう。
【愛犬の健康を考えたおやつの選び方・与え方】
- 無添加に近いものを選ぶ
- ドッグフードの一粒と同じくらいの大きさのものを選ぶ
- サイズが大きい場合は小さくカットする
- 野菜や果物を与える場合は、犬のNG食材ではないか注意する(犬に与えるおすすめの野菜:ニンジン、サツマイモ、ブロッコリー)
- いつものごはんの一部をおやつとして与える
- 毎日ではなく週に2~3回など「たまに与える」
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年齢・犬種・ライフステージ別の適正カロリーを把握
成長期・成犬・シニア犬といったそれぞれの年齢・ライフステージや犬種ごとに、適正なカロリー摂取量は異なります。また、体重維持をしたいのか?ダイエットしたいのか?それぞれの目的によっても、食事調整の仕方は異なります。
明確な決まりはないため、動物病院で愛犬に合った方法を相談して決めるのがベストです。
無理なく続ける運動メニュー
愛犬の太り過ぎを防ぐには適度な運動も大切です。飼い主さんも愛犬も無理なく続けられる運動メニューを考えてみましょう。無理なく続けるポイントは「作業的にならないこと」です。
お散歩のコースを変えてみて近所を開拓してみたり、少し離れた土地へ足を運んでみたり、花を探しながら散歩したりなど「飼い主さんが心躍る散歩」をすると楽しく続けられます。
散歩中は愛犬に「いい天気だね」「楽しいね」など話しかけてあげるのもおすすめです。
散歩時間の目安は以下を参考にしてみてください。
【散歩時間の目安】
小型犬(体重10㎏未満):1回20~30分 / 1日1~2回中型犬(体重10~20kg):1回30~60分 / 1日2回
大型犬(体重20kg以上):1回30~60分 / 1日2回
また、室内遊びや飼い主さんも一緒に楽しめる運動アイデアについては以下の記事をチェックしてみてください。
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適度な運動を習慣化できる環境づくりも大切
家の中で運動する際は安全な環境で思いっきり遊ばせたいものです。滑りにくい素材の床にしたり、安全で走りやすいマットを引いたりするのがいいでしょう。例えば以下のようなものがあります。
【ワンLOVEコート】

愛犬が走っても滑りにくい素材になるフローリングのコーティングです。
滑る床は愛犬の足腰に大きな負担がかかります。椎間板ヘルニアや脱臼、転倒による骨折などの原因にもなるでしょう。
ワンLOVEコートは”掃除のしやすさ”などのフローリングの良さはそのまま、愛犬の足腰にも優しい床を作れるコーティングです。
【スーパークッションターフ】

まるでフワフワな芝生の上にいるような、愛犬が思わず走りたくなるような素材の人工芝です。ベランダや屋上、庭、ドッグランなどスペースがある場所に設置すれば、愛犬の運動スペースが完成します。
また、お庭がある一軒家ではドッグランを作る飼い主さんもいます。自宅に作るドッグランに興味がある方は、ぜひ以下の記事を参考にしてみてください。
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自宅に手作りドッグランを作ろう!DIYのポイントやあると便利な設備、100均アイテムを使ったアイディアをご紹介!
【高齢犬は要注意】他の病気が隠れているかも?こんなときはすぐ病院へ

犬の太り過ぎの原因には、他の病気が隠れている場合もあります。
とくに「7〜8歳の高齢犬が急激に太ってきた場合」は要注意です。以下のような病気が隠れている可能性があります。
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)
- 甲状腺機能低下症
- 肝機能疾患
- 循環器疾患により腹水が溜まる
病院をすぐに受診すべきサイン
愛犬が太ってきたのと同時に以下のようなサインが見られたら、なるべく早く動物病院を受診しましょう。- 元気がない・あまり動かない
- 多飲多尿
- 食欲は減っているのに体重が増える・太って見える
- 食事量を変えていないのに急に太った
- 毛が薄くなった
- 毛の艶がない
愛犬の太り過ぎ予防は愛情の証
かわいくてつい、ごはんやおやつをたくさんあげたくなる気持ちは、多くの飼い主さんが感じるものでしょう。しかし、犬の太り過ぎはケガ・病気・寿命の短縮などにつながりやすいです。
長く元気に一緒にいられるように、できるだけ早いうちから正しい知識で太り過ぎ対策をしていきましょう。
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家