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【専門家監修】シニア猫がごはんを食べない6つの原因|対処法&受診のタイミング

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目次
    この記事を書いた人
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
    (パピヨン/男の子)

    「シニア猫が急にごはんを食べなくなった…」

    そんなときは不安に感じますよね。

    猫の食欲不振は、年齢による体の変化が原因の場合もあれば、口腔トラブルや病気のサインであることもあります。

    放っておくと体力の低下栄養不足、脱水、病気の進行などにつながるリスクもあるため、できるだけ早めの対処が必要です。

    この記事では、認定動物看護師の資格をもつ筆者が「シニア猫がごはんを食べない6つの原因」「食べさせるための工夫」「受診の目安」を専門的にわかりやすく解説します。

    シニア猫がごはんを食べない6つの原因

    シニア猫がごはんを食べない6つの原因

    ここでは、シニア猫がごはんを食べない6つの原因をまとめました。

    加齢による消化機能や基礎代謝の衰え

    シニア期になると、若い時よりも胃腸のはたらきが弱くなりがちです。

    胃腸のはたらきが弱くなると食べ物を消化する機能が衰えるため、食欲が落ちやすくなります。

    また、基礎代謝が衰えるのは、シニア期になるにつれて寝る時間が増えたり活動量が減ったりするためです。

    生きるのに必要なエネルギー量が減るため、ごはんも以前より食べなくなります。

    内臓疾患を患っている

    シニア猫に多いのは「慢性腎臓病」をはじめとする腎臓の病気です。腎臓の病気では、食欲不振の症状が出ることがよくあります。

    また、肝臓の機能に障害が出ている場合もごはんを食べられなくなることがあります。

    内臓疾患は早期の受診治療開始が回復・改善のカギです。ごはんを食べないことのほかにも以下のようなサインが見られたら早めに動物病院へ行きましょう。

    【内臓疾患時によく見られるサイン】
    • 元気がない
    • 食欲不振
    • 下痢・嘔吐などの消化器症状
    • 体重の急な変化
    • 多尿、乏尿など極端な尿量の変化
    • 黄疸
    • 警戒心が高くなる
    • 物陰に隠れていることが多くなる

    噛む力の衰え

    猫も歳をとるとあごの力が弱くなります。噛む力が衰えて疲れやすくなるため、ごはんを食べなくなることもあるでしょう。

    たくさん噛まなくても食べられるセミモイストフードやウェットフード、スープ状のフードなどなら食べてくれる場合もあります。

    口腔トラブル(歯周病、口内炎など)

    歯周病や口内炎などの口腔トラブルでは、痛みや違和感から食欲がなくなる子もいます。

    とくにシニア猫は、唾液量の減少消化酵素が出にくくなるなどの老化により歯周病になりやすいです。

    こまめな歯磨きや定期健診など、口腔ケアを適切に行なってあげましょう。

    鼻の異常による嗅覚の低下

    鼻水・鼻づまり・鼻腔内のデキモノや腫瘍などがある場合も、ごはんを食べなくなることがあります。

    匂いは猫にとって「食べ物の安全やおいしさを確認するため」の重要な情報。

    嗅覚が低下しているとその判断ができないため、食べなくなることがあるのです。

    ストレス

    猫は繊細でストレスに敏感な子が多いです。

    ここで、猫がストレスを感じやすいシチュエーションをチェックしておきましょう。

    【猫がストレスを感じやすいシチュエーション】
    • 引っ越し・旅行など違う環境に置かれたとき
    • 知らない人が家に来る
    • 大きな話し声
    • お風呂に入るとき
    • 部屋の模様替え
    • 掃除機や洗濯機などの大きな音
    • 芳香剤・消臭剤など不快なニオイ
    • 雷や台風など天候による騒音
    • 過度なスキンシップ
    • 過度に注目されている

    引っ越しや天候によるものなど仕方のない状況もあります。

    話し声やニオイなど、飼い主さんがコントロールできるところでどれだけストレスを失くしてあげるかが大切です。

    シニア猫がごはんを食べないときの対処法|シーン別に解説

    シニア猫がごはんを食べないときの対処法|シーン別に解説

    食欲不振のシニア猫にごはんを食べさせるべきなのか?

    これは、状況によって「Yes」にも「No」にもなります。ここでは、シーン別の対処法をまとめました。

    元気はあるが食欲が落ちているとき

    いつも通り排泄をして、元気もある。リラックスして過ごしているし、愛情表現もいつも通りしてくれて、大好きなおやつには食いつく。

    なのに、ごはんは食べない。

    そういう場合はごはんに飽きていたり、気まぐれでごはんを食べなくなっているのかもしれません。

    このようなシーンでは、愛猫の食欲をそそるように工夫してみましょう。具体的な工夫の方法については後の項で紹介します。

    水もごはんも口にしないとき

    ごはんを食べないだけではなく水すら飲まないときは、体に異常が起きていることを疑ってください。

    水や食べ物を口元に近づけてみても反応が薄かったり避けたりする場合は、病院へ行くことを最優先にしましょう。

    ただし、気まぐれな場合もあります。

    呼吸がおかしい・ぐったりしているなど明らかに体調が悪そうな場合はすぐに動物病院へ行くことが大切ですが、そうでなければ1日(心配であれば半日)は様子を見てみてもいいでしょう。

    ごはんは食べないがおやつは食べるとき

    この場合は、ごはんに飽きていることが多いです。

    そもそも猫は「生まれつき偏食が強い」という傾向があります。

    さらにシニア猫の場合、これまで食べてきた味のレパートリーが豊富です。だからこそ、自分が気に入らない味のものや、代り映えのないごはんに飽きがきてしまうことがあります。

    栄養バランスやカロリー量に注意しながら嗜好品を活用してみましょう。

    嗜好品がメインにならないように、あくまで「ごはんを食べてもらうために軽く味付けをする」という意識で活用してみてください。

    ごはんを少量食べて残す日が続くとき

    この場合は、気まぐれなこともあれば、体調が崩れているということもあります。

    様子を見つつ受診を検討し、日誌などで食欲や食べたごはんの量などの記録をつけておくといいでしょう。

    ごはんを少量食べて残す状態が2、3日続いたら、動物病院で相談してみてください。

    シニア猫にごはんを食べさせる工夫

    シニア猫にごはんを食べさせる工夫

    ここでは、ごはんを食べないシニア猫にごはんを食べさせる工夫をまとめました。

    無理はさせず、愛猫の様子をよく見ながら試してみましょう。

    ウェットフードやトッピングを活用

    水分量の多いウェットフードは、ドライフードよりも嗜好性が高いといわれています。

    愛猫が好きそうな味のウェットフードをごはんに混ぜたり、上にトッピングしたりしてみましょう。

    愛猫に気に入ってもらえそうなら、ごはんをウェットフードに切り替えてみてもいいかもしれません。

    また、おやつやちゅーるをごはんに少し混ぜる方法もあります。

    「ごはんは食べないけどおやつは食べる」という場合、食欲はあるということが多いです。

    おやつやちゅーるをごはんに混ぜる際は、量やカロリーに注意しましょう。

    ドライフードをお湯でふやかす

    シニア猫は噛む力が衰えてくるため、カリカリのドライフードが食べづらいことがあります。

    レンジで温めるお湯をかける水にしばらく浸しておくなどしてふやかしてみましょう。

    お湯やレンジで温めるときには温度に注意が必要です。指で触ってぬるいくらい(40℃以下)になったことを確かめてから与えましょう。

    食器を変えてみる

    シニア猫は、前足の踏ん張る筋力が衰えてきたり首を痛めやすかったりします。

    高さのある食器に切り替えたり、台を使ってごはん皿の高さを高くしてあげたりするのがいいでしょう。

    例えば、上の画像のようなごはん皿がおすすめです。

    猫が少し頭を下げれば口が届く高さで、なおかつ皿の面に傾斜がついています。電子レンジでも使えるため、ごはんを温めたいときにも便利です。

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    また、食器の素材を変えてみるのもいいでしょう。

    例えば、ステンレスのお皿は金属っぽい味を感じやすいため、陶器やガラス製の食器に変えてみるなどの工夫があります。

    1日のごはんの回数を増やす

    1日に与えるごはん量はそのまま、与える回数を細かく分けるのも工夫の一つです。

    「ごはんは食べるけれど、1回のごはんを少量食べて残す」という場合にやってみてください。

    シニア猫のごはんを選ぶポイント

    シニア猫のごはんを選ぶポイント

    ここでは、シニア猫のごはんを選ぶポイントをまとめました。

    主食が「総合栄養食」になるようにする

    猫のごはんは人と同じように栄養バランスが大切です。

    主食には「総合栄養食」と記載があるものを必ず選ぶようにしましょう。

    とくに注意したいのは、ウェットフードを活用するときです。中にはおやつのような嗜好品に分類されるものもあります。

    間違えないために「総合栄養食」と書かれたウェットフードを選びましょう。

    シニア猫用フードに切り替える

    シニア猫用のフードには以下のような特徴があります。

    • 心臓・腎臓・肝臓・脳などの健康をサポートする栄養バランス皮膚や被毛を健康的に維持するための成分配合
    • 噛みやすいサイズ・固さ
    • 嗜好性に優れた味や匂い
    • 消化に配慮されている

    シニア猫用フードはメーカーによってさまざまなため、わからない場合は動物病院で相談をしてみてください。

    なお、シニア猫用のフードには「〇歳以上」というように対象年齢が書かれている場合もあります。表記をよく見て愛猫に合ったものを選びましょう。

    粒が小さいサイズのものを選ぶ

    あごの筋力が衰えてくるシニア猫には、たくさん噛み砕かなくても食べやすい粒が小さめのフードがおすすめ。

    シニア猫用のフードは粒が小さく作られている場合が多いです。選ぶ際は、粒の大きさに配慮されているかということもチェックしておきましょう。

    猫が好きな匂いがするごはんを選ぶ

    猫が好む匂いといえば、かつお節・まぐろ・チキンなどがあります。

    愛猫の好みをよく理解し、匂いに着目して選んでみましょう。

    また、余分な着色料・香料などが含まれていない無添加に近いものだとなお良いです。

    愛猫の好みがよくわからない場合は、お試しサイズの匂いが異なるごはんを用意してみるといいでしょう。

    ねこずきのごはん

    例えば「ねこずきのごはん」には、マンダイ・メカジキ・メバチマグロの原料が異なる3種類のお試し缶詰セットがあります。国産で無添加であるのも安心できるポイント。

    愛猫の好みを知りたい飼い主さんは、まずはお試しサイズのごはんで食べ比べさせてみてはいかがでしょうか?

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    ちゅーるは“ごはんの代わり”にできる?

    基本的にちゅーるは「おやつ」に分類されます。欲をそそるキッカケとしてごはんに少量を混ぜるのはいいでしょう。

    与えすぎるとごはんを食べなくなる原因になるので注意が必要です。

    ちゅーるの総合栄養食

    しかし、全てのちゅーるがおやつというわけではなく、ちゅーるの総合栄養食もあります。

    カリカリごはんを食べられなくなったシニア猫でも、ちゅーるのような液状ごはんなら食べやすいです。

    選ぶなら「総合栄養食」と書かれたちゅーるを選びましょう。

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    シニア猫がごはんを食べない場合の受診目安

    シニア猫がごはんを食べない場合の受診目安

    • 1日経ってもごはんを食べない
    • 吐き気や下痢・嘔吐などの消化器症状が出ている
    • 水分不足・水を全然飲まない
    • 普段より元気がない・ぐったりしている
    • お腹が痛そうにしている
    • 口が痛そうにしている
    • 少量だけ食べる状態が3日以上続く

    上記のような症状やサインが見られたら早めに動物病院へ行きましょう。

    異常時にすぐ気づくためには、日頃から健康な状態のときの愛猫をよく観察して知っておくことが大切です。

    「たまたまかな?」と感じても、念のため「異常があるかもしれない」ということを念頭に置いておきましょう。

    診察時に伝えるべき情報

    動物病院へ行ったら、できるだけ詳細に愛猫の状態を伝えることが大切です。

    • いつ頃からどんな状態が続いているのか
    • 最後に食べ物や飲み物を口にしたのはいつか
    • 水は飲んでいるのか
    • 普段元気だった時の様子との違い
    • 普段の習慣や食生活
    • 過去にかかった病気や受診歴・治療歴

    上記のような情報は診察時にスムーズに伝えられるようにするといいでしょう。

    “食べない”はSOSかも!シニア猫の小さなサインを見逃さないで

    シニア猫がごはんを食べないことは、単なる気まぐれではなく体からのSOSかもしれません。

    飼い主さんが早めに気づいてあげることで、健康寿命を延ばすことにもつながります。

    大切なのは、無理に食べさせようとしないこと。

    「ごはんを食べない」という事実だけを見るのではなく「なぜ食べないのか?」理由をさまざまな視点から見てあげてください。

    ごはんを食べられるように工夫してあげたり、異常を感じたら早めに動物病院へ行ったり、愛猫をよく観察して判断してあげましょう。

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
    舘 明奈
    動物看護師統一認定機構認定 動物看護師・ペットケアアドバイザー等多数資格保有
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