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気になる愛犬の口臭。
病気や体質など原因はさまざまですが、実は飼い主さんが原因を作ってしまっている場合もあります。
口臭の悪化を防いだり愛犬の健康を守ったりするためにも「うちの子、口が臭いなぁ」だけで済まさないことが大切です。
この記事では、認定動物看護師の資格を持つ筆者が、犬の口臭がひどい5つの原因や対処法・口臭ケア方法・おすすめのケアグッズを紹介します。
犬の口臭がひどい5つの原因

ここでは犬の口臭がひどい5つの原因をまとめました。
口の乾燥
水分が足りていない・鼻詰まりによる開口呼吸・夏場のパンティングなどで口の中が乾燥すると口臭がひどくなる傾向があります。これは乾燥により口の中の環境が変化するためです。
口腔内には、微好気性菌(酸素を好む菌)と嫌気性菌(酸素が少ない環境を好む菌)がいます。嫌気性菌は、口の中が乾燥してきて酸素が少なくなると活発になるというのが特徴です。
ニオイの原因になる物質を作り出す性質を持つため、乾燥で口の中に嫌気性菌が増えると唾液に粘りが出てくさくなります。これが、ひどい口臭の原因になるのです。
また、加齢やストレスによって唾液の分泌が減少した場合も、口が乾燥し口臭がきつくなることがあります。
歯周病

(画像引用元:KINS WITH動物病院 犬の歯周病の治療方法とは?軽度から重度の症状を解説)
歯周病は犬の口臭の原因で最も多いと言われています。
歯肉だけが炎症を起こす歯肉炎とは違い、歯そのものや歯の周りの靭帯・歯を支える骨など(歯周組織)にも炎症が及ぶものです。
歯垢や歯石から出るニオイ、歯周組織の炎症による膿などが原因となり腐敗臭が発生します。
口腔内の炎症や疾患

(画像引用元:松原動物病院 口腔内腫瘍)
口内炎や口の中の粘膜が剥がれて唾液に混ざったときにも、きつい口臭が発生することがあります。
口内炎が一向に治らない場合は口腔内に腫瘍がある可能性も考えられるでしょう。腫瘍が悪性の場合、周囲の組織を破壊しながら猛スピードで進行するため、粘膜・歯肉・骨組織もどんどん壊れていきます。そのため膿が出て腐敗臭が発生する場合が多いです。
なお、口腔内の炎症や疾患が原因の場合は症状が口臭だけにとどまらないことがほとんどでしょう。口の中や周辺の痛み・違和感・食欲低下・食べこぼしなどのサインが見られることがあります。
胃腸や肝臓・腎臓など内臓疾患
胃・腸・肝臓・腎臓などの内臓に異常がある場合も、口臭がきつくなることがあります。どんな症状・病気が関連するのか分けて見ていきましょう。〈胃炎〉 胃酸が過剰分泌され、胃酸を吐くことが増える傾向にあるため、胃酸本来の酸っぱいニオイが口臭になる。胃炎の原因として、感染症・中毒・異物・免疫疾患・胆汁の逆流などが挙げられる。 空腹が長引いた場合も、胃酸が増えて嘔吐することがある。 〈肝不全・腎不全〉 肝臓や腎臓は、体内の不要物を解毒したり排泄したりするために働く重要な器官。 肝不全や腎不全により正常に働かなくなると、通常は体外に排泄される不要物がどんどん溜まり、体臭や口臭となって出てくる場合がある。 〈腸閉塞・腸捻転(腸がねじれた状態)〉 腫瘍や異物による腸の詰まりなどが原因で腸内の流れが滞ると腸閉塞を起こす。暴食や食事・給水直後の激しい運動などが引き金となって腸捻転が起こることが多い。 肛門からうんちが出て行かないため、口からうんちのようなニオイがする場合もある。 |
内臓疾患では、症状が口臭だけではなく元気消失・食欲不振・便秘・嘔吐など別の症状が出ることが多いです。
ドッグフードの食べかすのニオイ
ドッグフードは水分量が多いほど食べかすとして残りやすいです。例えば、セミモイストタイプやウェットタイプのものがあります。食べかすとして残ったドッグフードが口臭としてきつく感じる場合もあるでしょう。
また、劣化したフードほど酸化の影響できついニオイになりやすいと言われています。
【ニオイで見分ける】犬の口臭の原因

犬の口臭は、原因によってニオイの種類が異なります。ここではニオイで見分けられる口臭の原因をまとめました。
腐敗臭:歯周病
歯周病は”歯そのもの”だけではなく”歯の周りの靭帯”や”歯を支える骨”などの歯周組織にも炎症が及ぶものです。歯周病菌が増殖してニオイを発生させていたり、口内の炎症による膿がニオイを発生させていたりします。
このような歯周病のときは、口から腐敗臭(生ごみのようなニオイ)がします。
酸っぱいニオイ:胃腸の不調や疾患
胃炎による胃酸の逆流や、腸閉塞によって胃酸が流れて行かないなど、胃腸に何かしらの異変が起きている場合、犬は胃酸を嘔吐することがあります。胃酸は本来酸っぱいニオイの分泌物です。そのため、胃酸を嘔吐すると口から酸っぱいニオイのする口臭を感じることがあります。
アンモニア臭:腎臓・肝臓の不調や疾患
肝臓はアンモニアを分解し、腎臓はアンモニアを体外に排出するのにとても重要な器官です。肝不全や腎不全によって正常に働かなくなると、アンモニアが体内に溜まっていきます。溜まったアンモニアは、血液に混ざってやがて全身に広がり、体臭や口臭として体外に出てくるようになるのです。
アンモニア臭は「汗が付いた服を放置したときのようなニオイ」というように表現されます。
うんちのようなニオイ:重度の腸疾患
肛門から排泄されるはずのうんちが、腸管が塞がるような重度の腸疾患の影響で腸内にどんどん溜まると、うんちの腐敗が進んでしまいます。腐敗したうんちからはガスが出るため、そのガスが血液に乗って全身を巡り、体臭や口臭として体外に出てくるのです。
生臭い魚のようなニオイ:口の乾燥
生臭い魚のような口臭がする場合、考えられる原因は口の乾燥です。犬の口が乾燥する原因には以下のような状況があります。
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愛犬の口臭に違和感を覚えたときの対処法

ここでは愛犬の口臭に違和感を覚えた時の対処法をまとめました。
水を飲んで口臭が気にならなくなる場合は様子見でOK
水を飲んで口臭が消える場合、口の中の乾燥が口臭の原因になっていることが多いです。この場合は一旦様子を見て構いません。もし水を飲んでも常に口臭がきつかったり、水を飲みにくそうにする様子が見られたら、乾燥以外の原因があるかもしれません。動物病院で診てもらいましょう。
常に開口呼吸している場合は早めに受診
常に口を開けて呼吸しているときは、鼻炎などで鼻の中が塞がっている可能性があります。開口呼吸を続けると、口の中が乾燥してさらに口臭がきつくなる可能性も。悪化しないよう、早めに動物病院へ連れていきましょう。
病院で歯石除去してもらう
歯石の沈着による歯肉炎・歯周病によって口臭がきつい場合、動物病院で相談をして歯石除去をしてもらうといいでしょう。沈着してしまった歯石は歯磨きでは取れないため、動物病院での処置が必要です。歯石は歯周病の悪化やさらなる口臭悪化の原因にもなります。また歯周病は、口臭だけではなく菌血症・敗血症などにもつながって命に危険が及ぶリスクもあるのです。
年齢や持病によっては麻酔を使う歯石除去処置が危険な場合もあるため、獣医師と相談をして決めましょう。
歯石除去処置をしたあとは歯磨きを習慣にすることが大切です。犬の歯磨きについては後の項で解説します。
内臓疾患が原因の場合は治療が最優先
口臭とともに激しい下痢、嘔吐、便秘などの症状がある場合、内臓に異常があるかもしれません。内臓の異常は一刻を争う緊急事態である場合も。早急に動物病院へ行き、治療を最優先にしましょう。
日頃からできる愛犬の「口臭ケア」5選

ここでは日頃からできる愛犬の「口臭ケア」を5つまとめました。
1.水分をしっかり摂らせる
口の乾燥は口臭の原因になります。飲水量を日頃からチェックし、水分をよく摂らせるようにしましょう。犬の健康に必要な飲水量の目安は、体重1kgあたり40〜60mlと言われています。
また、シニア犬や足腰に病気を抱える犬は水分を自ら積極的に摂りに行かない場合が多いです。
口元に水皿や給水器を持ってきて飲ませてあげる・手で水をあげる・シリンジで水を飲ませる・ごはんに水分をまぜる・水分量の多いごはんにするなど、水分を摂らせてあげる工夫をしましょう。
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2.毎日の歯磨き
毎日の歯磨きは口臭対策にとても大切な習慣です。犬は人よりも歯垢が歯石になるまでの期間が短いと言われています。
【歯垢が歯石になるまで】 人:12~20日程度 犬:2~3日程度 |
歯垢は歯ブラシで取れますが、歯石になると歯ブラシでは取れません。スケーリング(麻酔をして歯石を除去する処置)が必要です。
麻酔は犬の身体に大きな負担をかけるため、口臭対策や愛犬への負担をなくすためにも毎日の歯磨きを大切にしましょう。

(画像引用元:Virbac デンタル製品 C.E.T.®歯みがきペースト)
また、歯磨き粉の工夫もするといいでしょう。動物病院でよく勧められるのはビルバックのC.E.T.®歯みがきペーストです。食べかすや歯垢を落とすだけでなく、ペーストの中に歯垢が付きにくくなる成分も含まれているためおすすめです。
3.歯磨きグッズの工夫
「歯磨きが大切」とはいえ、口を触られることや歯ブラシを嫌う犬は多くいるでしょう。そんなときは、歯磨きグッズの工夫をしてみましょう。歯磨きが苦手な子におすすめの歯磨きグッズをいくつか紹介します。
【歯みがきラクヤー シート】

指に巻いて使う歯磨きシートです。歯ブラシで歯茎を傷つけられて痛い思いをした子や、歯ブラシ自体が苦手な子におすすめです。
【歯みがきラクヤー リキッド】

飲み水に混ぜるリキッドタイプの歯磨きグッズです。歯ブラシや歯磨きシートを嫌う子でも、口を触ることなく歯の健康を保てます。完全無添加で防腐剤も入っていないため、飲んでも害はなく安全です。
また、ロープ状・ひも状の歯磨きおやつを見かけることがあるでしょう。しかし、ロープ状・ひも状の歯磨きおやつは喉に詰まらせることも多くあるため注意が必要です。
愛犬に与えるのであれば、喉に詰まらせないように注意して見てあげましょう。
4.フードやサプリメントで口臭ケア
お口の中の細菌には、腸と同じように「善玉菌」と「悪玉菌」がいて、悪玉菌が歯周病を引き起こすと言われています。悪玉菌を減らして善玉菌を増やすようにコントロールすることで口臭をおさえられるという研究結果もあるのです。また、口臭は腸内環境とつながっています。便秘や病気などで腸内環境が悪いと、うんちが腐って腸に悪玉菌が増え、ガスを発生させるようになるのです。
このガスが血液に乗って全身に広がり呼吸からも排出されるようになると、うんちのようなニオイがする口臭の原因になります。
消化を良くするフードや消化を助けるサプリメント、腸内フローラを整えるサプリメントなどを使って普段からケアをしていくのがおすすめです。
5.定期的な動物病院での検診
犬のきつい口臭は、歯周病や胃腸の不調、腎臓や肝臓の機能低下など病気や身体の異常が関係していることもよくあります。定期的に動物病院で検診を受けることで、早期に異変に気付けることも多いはずです。可能なら1か月に1回程度のペースで簡単な検診を受けることをおすすめします。
「口が臭い」を当たり前にしない
犬のきつい口臭は「うちの子、歯磨き嫌がるし」「まあ、犬だからな」と、気付いていてもみて見ぬふりをされがちです。しかし、犬の口が臭いのは決して”当たり前”ではありません。
歯磨きの習慣化や水をよく飲ませるなど、家でできる口臭ケアは出来る限り早いうちに、少しずつ始めてみてください。
また、腐敗臭やアンモニア臭など異常な口臭を感じたら早めに動物病院へ連れていきましょう。
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この記事を書いたペットとの暮らしの専門家