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【獣医師監修】犬の椎間板ヘルニア、家でできることは?安静のポイントや住環境、自宅ケアを解説

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目次
    この記事を書いた人
    葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。

    犬の椎間板ヘルニアと聞くと、胴長の犬や肥満の犬がなりやすいイメージを持つ飼い主さんも多いのではないでしょうか。

    しかし、犬種や体型にかかわらず、どんな犬でも椎間板ヘルニアは起こり得ます。

    愛犬が椎間板ヘルニアにならないよう予防するために、そしてなってしまった場合は悪化させないためにどんなことを工夫する必要があるのでしょうか。

    本記事では、犬の椎間板ヘルニアの原因や症状、安静のポイント、住環境の整え方、自宅でできるケアについて解説します。

    犬の椎間板ヘルニアとは?原因と症状を知っておこう

    犬の椎間板ヘルニアとは?原因と症状を知っておこう

    犬の椎間板ヘルニアを予防・対策するために、まずはどのような疾患なのかを知ることが大切です。

    ここでは、椎間板ヘルニアとはどんな状態なのか、何が原因で起こるのかについて解説します。

    犬の椎間板ヘルニアはなぜ起こる?主な原因

    まず、椎間板とは、背骨を構成する椎骨と椎骨の間にあり、クッションのような役割を果たしている組織です。

    椎間板が変性や突出することで脊髄や神経が圧迫され、椎間板ヘルニアが起こります。

    主な原因として、加齢や遺伝性の要因による軟骨成分の変性のしやすさ、摩擦などによる慢性的な負担などが挙げられます。

    犬の椎間板ヘルニアで見られる主な症状

    犬の椎間板ヘルニアは、症状の程度によってグレード分類されることが一般的です。

    それぞれのグレードにおける症状の目安は以下の通りです。

    グレード

    主な症状

    グレード1

    • 疼痛を感じる
    • 特定の姿勢をとる際に痛みを感じる
    • 触れられることで痛みを感じる
    • 麻痺や感覚消失は見られない

    グレード2

    • 軽度の麻痺が生じる
    • ふらつきやナックリングなどが見られる
    • 歩行困難や起立困難は見られにくい

    グレード3

    • 重度の麻痺が生じる
    • 起立困難や歩行困難が見られる
    • 自力での排せつが難しくなる場合もある

    グレード4

    • 完全麻痺および皮膚表面の刺激を感じる浅在痛覚の消失
    • 軽くつねる、冷たいもので触れるなどの浅在感覚が麻痺する
    • 下半身の完全な麻痺
    • 自力での排せつは困難

    グレード5

    • 完全麻痺および深在痛覚の消失
    • 下半身の完全な麻痺
    • 深部への圧迫などの感覚も麻痺する
    • 自力での排せつは完全に不可能

    グレードによって、第一選択となる治療方法も異なります。

    犬の椎間板ヘルニアで受診を急いだほうがよい症状

    軽度の椎間板ヘルニアや発症初期では、飼い主さんが症状に気づきにくいこともあります。

    しかし、以下のような症状が見られた場合は、椎間板ヘルニアの疑いや重度の危険性があるためすみやかな受診が必要です。

    • 急に歩けなくなった
    • 後ろ足が動かしにくそう
    • 腰や背中などに痛みがありそう
    • 症状が急速に悪化している
    • 尿や便が出ない
    • 立ち上がれない
    • 強い痛みを訴える

    重度の椎間板ヘルニアや、類似した神経系に起こる重症度の高い疾患の場合は、すみやかな獣医師による判別および治療が必要な可能性が高いです。

    犬の椎間板ヘルニアで家でできることは?まずは安静と環境整備

    犬の椎間板ヘルニアで家でできることは?まずは安静と環境整備

    愛犬が椎間板ヘルニアと診断された場合、家庭で通院しながら経過観察を行うケースも多いです。

    このときに、より治療経過を良好にするために、家庭での配慮や飼い主さんの協力は欠かせません。

    どのような工夫をしたら良いのでしょうか。家庭でできることや生活上の注意点を解説します。

    獣医師の指示に従って安静を保つ

    椎間板ヘルニアの治療で最も大切なことは安静を保つことです。

    ジャンプや発散のために走り回る習慣、階段の昇降運動などは避ける必要があります。

    狭いサークルやクレートなどを活用して運動を制限できると良いでしょう。

    必要な安静の程度や期間などは症状によって異なるため、獣医師の指示に従いましょう。

    処方された薬は獣医師の指示どおりに使う

    薬を飲ませるのが大変、治った気がするなどの理由から、途中で投薬をやめてもよいか迷った経験がある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

    処方された薬は、愛犬の椎間板ヘルニアを完治させるために必要なものです。

    必ず獣医師の指示通り投薬しましょう。

    自己判断での投薬の中止や増減はおすすめできません。

    もし、投薬中に気になることがあれば、体調の変化などを記録をしておくと受診時に情報を共有しやすいです。

    抱っこや排泄を背中に負担がかからない方法で介助する

    椎間板ヘルニアになると、姿勢によって痛みや違和感を感じたり、症状が悪化したりする場合があります。

    特に、背中や腰に負担がかからない姿勢をとることが大切です。

    抱っこや排せつの際は、背中が反ったりねじれたりしないよう、胸やおしりの両方を支えて負担を軽減させましょう。

    高い位置での抱っこの場合、急に動いて落下をさせないよう注意が必要です。

    犬の椎間板ヘルニアを悪化させない住環境の工夫

    犬の椎間板ヘルニアを悪化させない住環境の工夫

    愛犬が椎間板ヘルニアになったら、生活環境の中で「滑る」「ジャンプをする」「飛び降りる」「階段を使う」などの動作をできるだけ減らすことが大切です。

    愛犬の過ごす場所や生活動線を確認し、無理なく過ごせる環境づくりをしてあげましょう。

    フローリングなど滑りやすい床に対策をする

    「滑る」動作につながりやすい床の素材には注意が必要です。

    フローリングの上に、滑りにくいマットやカーペットを敷き、足元が滑らないような工夫をしましょう。

    生活環境すべてに敷く必要はありません。

    犬がよく歩く場所や、過ごす時間の長い場所、方向転換をよくする場所などに予防として滑りにくい素材のマットやカーペットを敷いてもよいでしょう。

    滑りにくさに配慮した、愛犬に優しい床材に変えることも選択肢の一つです。

    ソファやベッドからの飛び降りを防ぐ

    高い場所からの飛び降りは、背中や腰に負担をかける危険性があります。

    治療の経過とともに痛みや違和感を感じにくくなると、いつもの習慣でソファやベッドに飛び乗ったり、飛び降りたりする場合もあります。

    高い場所に上らせないことや、ジャンプを防ぐような環境作りをすることが必要です。

    階段の使用が欠かせない生活をしている場合も、治療中は階段を使用しなくても生活できるように環境の見直しをしましょう。

    寝床・トイレ・水飲み場を近くにまとめる

    床や段差への対策をしていても、移動をすることで、体に負担はかかります。

    負担を軽減するために、愛犬の移動距離を短くする工夫も大切です。

    生活に必要なトイレ、水飲み場、寝床などを近くにまとめることで、移動距離を縮め、安全な生活動線を作ることが可能です。

    犬の椎間板ヘルニアの自宅ケアで注意したいこと

    犬の椎間板ヘルニアの自宅ケアで注意したいこと

    愛犬が少しでも早く改善するようにと、できるだけ自宅でのケアを増やしたいと思う飼い主さんも多いでしょう。

    しかし、自宅でのケアは獣医師により決められた治療を支えるためのものである必要があります。

    痛みや麻痺などの神経症状のある時期の自宅ケアは、症状の悪化につながる危険性があるため注意が必要です。

    自己判断で自宅でのケアを追加せず、できることを獣医師に確認することをおすすめします。

    マッサージやストレッチは自己判断で行わない

    愛犬の回復が少しでも早くなるように、家庭で投薬のケアとあわせてマッサージやストレッチを試したくなる気持ちはとても共感できます。

    しかし、椎間板ヘルニアの状態によっては、マッサージによる刺激やストレッチによって体を動かすことが負担となり、悪化につながる危険性があります。

    リハビリなどは開始するのに最適な時期があり、マッサージやストレッチも含めて治療の一環です。

    獣医師から開始時期や適切な方法などの指示を受けたうえで行いましょう。

    適正体重を維持して背中や腰への負担を減らす

    体重が増えすぎると、日常生活で足腰にかかる負担も大きくなります。食事やおやつの量を見直し、愛犬に適した体重を維持できるよう管理しましょう。

    四肢や背中、腰などへの負担を軽減するために、適正体重を維持することはとても大切です。

    運動に頼らず、食事量やおやつの量などの見直しを行い、適正体重を維持し、肥満を予防することが椎間板ヘルニアの悪化予防や再発防止につながります。

    排尿・排便の変化をチェックする

    椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されることで、自力での排尿や排便が困難になる場合があります。

    家庭で排せつがいつも通り行われているかを確認して、困難である様子が見られたら、すみやかに受診する必要があるでしょう。

    排せつの有無だけでなく、回数や量、排せつ物の状態などをよく観察し、いつもとの違いを比較することが大切です。

    犬の椎間板ヘルニアの治療方法

    犬の椎間板ヘルニアの治療方法

    犬の椎間板ヘルニアというと、外科的な治療を要するイメージがありますが、治療方法は症状の程度やグレードにより異なります。

    それぞれの治療方法について説明します。

    内科療法

    グレードが低く症状が軽い場合は、内科療法が選択される傾向があります。

    消炎剤で痛みや違和感を軽減したうえで、ケージレストや入院により安静を維持して回復を目指す方法です。

    この際に大切なこととして、階段の上り下りやジャンプなどを避け、安静を絶対に維持することが挙げられます。

    外科療法

    外科療法は、グレードが高く、麻痺などの症状の程度が悪化している場合に選択される治療方法です。

    脊髄を圧迫している物質を除去する手術が麻酔下で行われることが一般的です。

    手術のタイミングによって、術後の麻痺の改善などの予後も変化するため、適切なタイミングで行う必要があるでしょう。

    麻酔をかけて行うため、全身状態の評価を行いながら、外科的治療の可否や得られる治療効果を検討したうえで選択します。

    犬の椎間板ヘルニアに関するよくある質問FAQ

    犬の椎間板ヘルニアに関するよくある質問FAQ

    椎間板ヘルニアは、犬種や体型にかかわらず、どんな犬にもなり得る疾患です。

    愛犬がヘルニアになったときに不安になる気持ちは当然でしょう。

    ここでは、飼い主さんからよく聞く質問について回答します。

    Q1:椎間板ヘルニアは再発することはありますか?

    外科的な治療を行って完治したように見えても、椎間板ヘルニアは生活環境や体型、運動による負担のかかり方によっては再発する場合もあります。

    再発を予防するためにも、生活環境を整えることや肥満を予防すること、筋肉量を維持することなどは欠かせません。

    また、負担のかかり方は犬種差や個体差があります。かかりつけの獣医師と相談しながら特に注意すべき点を把握できると安心です。

    Q2:椎間板ヘルニアになりやすい犬種は?

    犬の椎間板ヘルニアは、主にハンセンⅠ型とハンセンⅡ型に分けられます。

    ハンセンⅠ型は、遺伝的に椎間板が変性しやすい「軟骨異栄養犬種」に多く見られます。ダックスフンドやコーギー、ビーグル、フレンチ・ブルドッグ、パグなどが代表的です。

    一方で、ハンセンⅡ型と呼ばれる軟骨異栄養犬種が関連しない、繊維化や摩擦が関連する椎間板ヘルニアも存在します。

    中型犬や大型犬などに注意が必要で、ハンセンⅡ型の椎間板ヘルニアの好発犬種です。

    しかし、好発犬種であるために必ず発症するわけではありません。

    どんな犬種でも起こり得るため、日常生活の中で予防することが大切です。

    Q3:犬の椎間板ヘルニアは手術しないとどうなりますか?

    症状の程度によって、内科治療による経過観察を行うか、手術を要するかは異なります。

    軽度であれば、手術を行わなくても状態が改善される可能性も高いです。

    症状の進行や程度によっては、手術により脊髄を圧迫している物質を除去する必要があるため、手術を行うことが第一選択となる場合があります。

    適切なタイミングですみやかな手術を行うことが、後遺症として麻痺を残しにくくすることなどにつながる傾向があります。

    まとめ|犬の椎間板ヘルニアは獣医師の指示に沿った自宅ケアを

    椎間板ヘルニアを発症すると、今後の運動の可否や後遺症など不安になることも多いでしょう。

    しかし、家でできることは安静を守り、床の滑りにくさや階段の昇降のしやすさなど、背中や腰に負担がかかりにくい環境へと整えることが大切です。

    リハビリテーションなども専門家による指示や指導が欠かせません。

    自己判断での運動の再開やマッサージは避け、獣医師と相談しながら、症状や治療経過を適切に評価したうえで、指示に従ってください。

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
    葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。