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【猫の安全対策】階段は危ない?事故を防ぐためのアイデアや最適な階段寸法をご紹介

目次


    階段は、猫の運動不足やストレス解消にぴったりの場所です。
    愛猫が元気に階段をかけ上がる姿は、とても微笑ましいものですよね。

    しかし、猫にとって大好きな遊び場である「階段」が、実は思わぬ事故の原因になるかもしれない……と意識されている飼い主さんは、意外と少ないのではないでしょうか?

    本記事では、二級建築士の資格を持つ筆者が、階段にひそむ危険や、猫が階段で安全に遊ぶための具体的なアイデアをご紹介します。

    これからの愛猫との暮らしを、さらに安心で快適なものにするために、階段の安全対策についてぜひ一緒に考えてみましょう。

    猫にとって階段が魅力的な理由2選

    階段の安全性を見直すには「なぜ猫にとって階段が魅力的なのか」を改めて確認したうえで対策することが大切です。

    主な2つの理由をご紹介します。

    ①高いところが大好きだから

    猫は本能的に高い場所を好む生き物です。

    これは野生時代から受け継がれた習性で「高所から周囲を見渡すことで安全を確認し、獲物を発見しやすくするため」といわれています。

    階段は高いところが大好きな猫にとって、格好の展望スポットといえるでしょう。

    特に階段の一番上からは、家の中や家族の行動を把握できます。

    猫にとって階段のような高いところは、安心してリラックスできる憩いの場所なのです。

    ②運動不足やストレスを発散できるから

    猫が階段に魅力を感じるもう一つの理由として「運動不足とストレス発散に役立つため」というのが挙げられます。

    室内で飼われている猫にとって、運動不足は大きな課題です。
    思うように体が動かせないと、ストレスが溜まっていきます。

    階段は、自然と上下運動ができる場所なので、猫の運動不足解消にうってつけです。

    階段を駆け上がったり、上り下りを繰り返したりするなかで、猫はストレスを発散し心身ともにリフレッシュできます。

    単調な生活になりがちな室内猫には、運動不足やストレスを発散するために、必要な場所ともいえますね。

    【階段の基礎知識】安全に上り下りするための階段設計



    猫にとって安全な階段づくりについてご紹介する前に、階段の各部材の用語や寸法などの基礎知識について解説しましょう。

    屋内外問わず、階段を設置する際は、安全性を確保するために法令(建築基準法)によって定められた基準で設計する必要があります。

    階段寸法は、学校や公共施設など、階段を設置する場所に応じて細かく規定されていますが、本記事では住宅に焦点を当ててお話しします。

    踏面(ふみづら)とは

    階段を上るときに、足を置く水平な部材を「踏面(ふみづら)」といいます。

    階段を構成するほかの部材と合わせて、安全で上り下りしやすい階段をつくる上で欠かせない部分です。

    住宅の踏面の奥行き寸法は、15cm以上と定められています。
    狭すぎると足を踏み外しやすくなり、広すぎると上り下りしにくくなるため、サイズ感のバランスが重要です。

    蹴込み板(けこみいた)とは

    階段を上るときに、つま先が当たる部分を「蹴込み板(けこみいた)」といいます。
    踏面の下側に垂直に取り付けられており、上の段と下の段をつなぐ役割を担っています。

    蹴込み板は、階段のデザイン性を左右するだけでなく、階段の安全面でも重要な部材です。

    蹴込み板がない階段を「スケルトン階段」もしくは「オープン階段」「シースルー階段」と呼びます。

    蹴上(けあげ)とは

    階段の一段の高さを「蹴上(けあげ)」といいます。

    踏面から次の段の踏面までの垂直距離を指し、踏面のサイズとあわせて、階段の勾配(傾斜)を決めるための重要な要素です。

    住宅における蹴上の寸法は、23cm以下と定められています。
    高すぎると上りにくく、低すぎると足を踏み外しやすくなるため注意が必要です。

    猫も飼い主さんも上り下りしやすい階段寸法

    一般的に「上り下りしやすい」とされる階段寸法は、次の計算式で算出できます。

    蹴上 × 2 + 踏面 = 60cm

    建築基準法で定められている「蹴上23cm以下、踏面15cm以上」の数値をこの式に当てはめた場合、合計が61となり、ほぼ理想通りといえます。

    ただし、ここで1つ落とし穴が……。
    実はこの「蹴上23cm、踏面15cm」のサイズだと、約57度の傾斜になってしまい、上り下りするには急すぎるのです。

    上記の図面は「蹴上16cm、踏面28cm」で設計した場合の階段です。
    勾配は約30度となり、緩やかな傾斜になっています。

    猫だけでなく、小さなお子さんやご高齢の方も上りやすいでしょう。
    階段を設計する際は、踏面や蹴上寸法はもちろん、緩やかで上りやすい勾配を意識することが大切です。

    しかし、緩やかな傾斜を優先してしまうと、階段の段数が増加し広い面積が必要になり、居住スペースを圧迫しかねません。
    全体的なバランスを考慮した設計が求められます。

    <参照>
    国土交通省|建築基準法の階段に係る基準について

    猫にとって危険な階段の特徴4選

    高いところへの上り下りを得意とする猫ですが、階段には思わぬ危険が潜んでいる可能性があり、注意が必要です。

    猫がケガをする恐れがある階段の特徴を4つご紹介します。

    ここでご紹介するものは、猫だけでなく飼い主さんにとっても当てはまるポイントですので、これから家を建てる方、リフォームを予定されている方はぜひ参考にしてみてください。

    ①滑りやすい

    健康で元気な猫は、階段を前にすると勢いよく駆け上がることが多いですが、思いがけず足を滑らせてしまう危険があります。

    特にツルツルとしたフローリング材やタイル、大理石などの素材は注意が必要です。

    階段に滑り止めのマットや滑り止めテープを設置してあげましょう。

    また、猫の足裏の毛が長いと、肉球周りを覆ってしまい、さらに滑りやすくなります。

    猫の手脚のお手入れも、階段を安全に使用するためには欠かせません。

    ②段差が大きい

    蹴上が高すぎる階段、つまり1段1段の段差が大きい階段は、猫にとって大きな負担です。

    健康で元気な成猫であっても、段差の大きな階段だとリズミカルに駆け上がることができず、足を滑らせて転落してしまう恐れがあり危険です。

    住宅の蹴上寸法は、建築基準法では「23cm以下」と定められていますが、実際にこのサイズで階段を設置すると、猫はもちろん飼い主さんにとっても高すぎる可能性があります。

    ③急勾配

    「急勾配」とは、傾斜がきつい階段のことです。
    急な傾斜だと、誤って階段を踏み外し、事故につながる恐れがあります。

    一般的な住宅の階段の勾配は、約30~40度ほどです。

    【階段の基礎知識】安全に上り下りするための階段設計でも解説しましたが、猫も飼い主さんも上り下りしやすい緩やかな傾斜を意識し、設計することが大切です。

    ④真っすぐな階段(直階段)

    階段には、形状によってさまざまな種類があります。
    たとえば「直階段」や「かね折れ階段」「折り返し階段」などです。

    直階段とは、上下階を一直線に結ぶ階段です。
    折り返しがなく踊り場がないため、足を踏み外すと一気に転げ落ちてしまうリスクがあります。

    かね折れ階段や折り返し階段は、階段の途中で90度、もしくは180度曲がって設置される階段です。
    万が一落下しても、踊り場で止まれるので、ケガのリスクは直階段より軽減されます。

    直階段は省スペースで設置できるため、日本の狭い住宅環境に適していますが、安全面での危険性が最も高い形状なので注意が必要です。

    猫が階段で落下しないためのアイデア3選

    階段による事故を防ぐアイデアを3つご紹介します。

    ①滑り止めマットを設置する


    画像引用:【Amazon 限定ブランド】階段マット 階段用滑り止め70X22cm 【15枚入り】

    階段の踏面に「滑り止めマット」を敷くことで、猫が滑って転落するリスクを減らせます。

    これから家を建てる方や階段のリフォームをする方は、階段に滑りにくい素材の採用をおすすめします。
    建築士や設計士に相談してみましょう。

    ②脱走防止柵を設置する


    画像引用:ねこ工房

    健康な成猫の場合、住宅の階段であれば難なく上り下りできますが、子猫やシニア猫はなかなかスムーズに上ったり下りたりできないことも多いでしょう。

    誤って階段に侵入してしまい、自力では下りられないケースも考えられるため、子猫やシニア猫が間違えて階段エリアに入らないような対策が必要です。

    そこで、脱走防止対策に使われる「脱走防止柵」の設置がおすすめです。

    にゃんがーど」や「ねこゲート」は、格子状になっており、圧迫感が軽減されたデザインが特長。
    愛猫と飼い主さんがお互いの様子を確認できるのが、嬉しいポイントですね。

    ③落下防止ネットを設置する



    スケルトン階段(オープン階段)は蹴込み(けこみ)板がないため、勢い余った猫が隙間から落下するリスクがあります。


    画像引用:【楽天市場】階段ネット 転落防止 安全ネット NET15C 幅201〜300 丈30〜100cm JQ : 窓際貴族 mado

    蹴込み板がないだけでなく、手すり部分にも隙間が多い階段には、落下防止ネットの設置が有効です。

    猫はもちろん、小さいお子さんやご高齢の方がいるご家庭にも向いています。

    階段以外で遊ばせるためのアイテム

    猫にとって階段は、遊び場であると同時に事故やケガのリスクが多い場所でもあります。

    住宅の階段は、あくまで「人間が安全に上り下りすること」を目的としており、猫や犬をはじめとしたペットの安全まで考慮されて設計されているものではありません。

    「高いところへの好奇心や安心感が満たされる」
    「運動不足やストレスの発散になる」

    これらの猫にとっての階段のメリットは、安全のためにも階段以外の場所で補ってあげましょう。

    ここからは、階段以外で遊ばせるためのアイテムをご紹介します。

    インテリアカウンター



    インテリアに素敵に馴染む、猫の居場所におすすめのインテリアカウンターです。

    キャットウォークやキャットステップが組み合わさったデザインで、猫がくぐり抜けられる穴もあります。

    耐候性にも優れているため、窓際に設置してあげれば日向ぼっこができます。
    きっと猫のお気に入りの場所になるでしょう。

    クリアステップ



    ステップ面が透明になっている、クリアステップのキャットウォークです。

    愛猫の肉球好きな飼い主さんには、たまりませんね。

    壁付け・天井付けどちらにも対応しており、複数個組み合わせれば、上ったり下りたりといったさまざまな動きを促進できます。

    にゃんボールMAG



    昨今の住宅業界では「マグネットウォール」が注目を集めています。

    キッチンや浴室といった❝マグネット(磁石)がつく壁❞に取り付けて収納する、いわゆる「浮かせる収納」が流行っていますよね。

    狭い居住スペースでも、壁を利用することで、部屋を圧迫せず使用できるメリットがあります。

    にゃんボールMAGは、そんなマグネットウォールと組み合わせて使用するタイプのキャットステップです。

    マグネットタイプのキャットステップなので、脱着も自由自在。
    愛猫の好みや年齢に合わせて、気軽に位置を変えられます。

    <関連記事>
    キャットステップはマグネットで貼る時代?壁に穴を開けないキャットステップのすすめ

    フリーハンギングシェルフ


    壁に棚柱(ガチャ柱)という、金属製の柱に一定間隔で穴が開いた部材を取り付けて、そこにステップやキャットボックスなどを設置するフリーハンギングシェルフです。

    棚柱上であれば、自由に位置を変えられるため、愛猫の成長に合わせてレイアウトできます。

    どんなインテリアにも合う、シンプルなデザインが特長です。

    まとめ:猫だって落ちたら大変!安全に配慮した階段づくりを

    猫を飼われているご家庭では、脱走やベランダからの転落などに気を付けている飼い主さんも多いかと思いますが、意外と「階段」への安全対策は盲点だったのではないでしょうか?

    猫だって、足を滑らせたり隙間から落下したりすれば、当然ケガをしますし、危険です。

    特に子猫やシニア猫には注意したいものです。
    (我が家も、猫たちが小さいときは、階段エリアに立ち入らないように徹底していました)

    ご自宅の既存階段は、記事中でご紹介した滑り止めマットなどのアイテムを活用し、対策をしましょう。

    新築やリフォームを検討されている方は、ハウスメーカーや工務店に相談いただき、安全な階段づくりを実現させてくださいね!

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家

    安美 サヨリ

    猫2匹と暮らす二級建築士。
    (キジトラ/男の子)(キジシロ/女の子)

    エリア:東京都

    愛猫家住宅コーディネーター