• 公開日時:
  • 更新日時:

獣医師さんに聞きました! ペットとの暮らし「こんなときどうする?」 夏編

目次
    ペットとの暮らしでは、思いもよらないケガや病気に直面することもあります。できるだけ安全に、健康で過ごしてもらうためにはどのようなことに気をつければよいでしょうか。暑くなるこれからの時期、特に注意したいポイントを獣医師の弓削田先生に伺いました。 文/大貫翔子


    Pet Clinicアニホス院長/獣医師 
    弓削田直子先生

    麻布大学獣医学研究科博士課程修了。厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事委員。愛犬はフレンチブルドッグの「ぽー」ちゃん。

    留守中は特に注意!夏の室温管理

     犬や猫を飼っているお宅では、室温の管理が非常に重要です。エアコンの設定温度は26~27℃が適温とされています。それより低くしても構いませんが、犬・猫がエアコンの風を寒いと感じたときに快適な室温の場所に移動できるようにしておくことが大切です。

     飼い主さんが留守にする際は特に注意してください。夏場、留守中にペットが命を落としてしまう要因の多くが、室内での熱中症です。中でも特に多く見受けられるのは、①ゲリラ豪雨などによる停電によりエアコンが停止してしまう ②床やテーブルに置いてあるリモコンをペットが踏んでスイッチを押してしまい、エアコンが停止してしまう ③エアコンの効いた部屋から一度外に出た後、ドアが閉まって涼しい部屋に戻れなくなるといったケースです。

     ①②については、見守りカメラや遠隔操作によって室内の状況を確認し、エアコンを常時稼働できるようにしておくこと、③については、ドアを開放して閉じないようにしておくか、全室にエアコンをかけておくか、ペットが自由に出入りできるペットドアの設置が対策となります。

    適温でも危険!「鳴き続け」による熱中症

    認知機能が低下しているシニアペットは、エアコンが十分に効いていても注意が必要です。「狭い場所に入り込んで動けなくなってしまった」「身体の向きを変えたい」「排泄を知らせたい」というときに鳴き続けていると、体温が上がり、脱水症状を起こして熱中症になってしまうことがあります。徘徊癖のある子や寝たきりの子がいる場合は、できるだけ長時間の留守番はさせないようにしてください。

    お散歩は早朝の木陰がベスト



     汗をかくことができず、地面に近い場所を歩く犬は、真夏の日中に散歩するとあっという間に熱中症になってしまいます。気温が35℃でも地表熱は60℃ということもあるので、日が高い時間のお散歩はやめましょう。

     理想的なのは、早朝の木陰がある場所です。日が落ちれば涼しくはなりますが、アスファルトにはまだ熱が残っているからです。加えて、暗い時間帯は道に落ちているものが見えにくいため、誤飲につながりやすいという理由があります。

    食欲低下、水分補給に気をつけて



     健康な子でも、夏の暑い盛りは食欲が落ちてしまうことがしばしばあります。高齢や、腎臓の機能が低下している、もともと食に興味がない子はより顕著です。こんな時は、自然に水分を補給できる食事を心がけてください。ドライフードを食べているなら野菜を煮たものやお肉のゆで汁をトッピングしたり、缶詰フードにしてみたりするのもよいでしょう。

     お水を飲む量が減ったと感じたら、ペットが好んでお水を飲みたくなる器を考えてみましょう。大きさや高さ、素材、置く場所など工夫してみてください。また、疾患がなければ凍らせてシャーベット状にしてあげると、涼をとるという意味で口にしやすくなります。山羊ミルクや果物のジュースを凍らせたものなど、少し味がついていると摂取しやすくなります。

    まとめ

    犬・猫にとって熱中症は大敵!快適な温度と適切な水分補給で健康を守ろう
     

    もっと聞きたい!知っておきたい!「あぶない!」を防ぐペットとの暮らしQ&A

    Q.初めてペットを飼うことになりました。家の中ではまず、何をどう変えればよいですか?

    A.犬の場合は足腰に負担がかからないよう床を滑りにくくすることです。ペット用のワックスや、防音性・クッション性のあるカーペットなどで対策できます。ただし、タイルカーペットは連結部をかじってしまうことがあるので、異物を食べてしまう癖がある場合は境目のないカーペットの方が安心です。
    猫はベランダからの転落に注意してください。犬よりも器用に窓や扉を開けられるので、きちんと鍵をかけておきましょう。
     

    Q.飼っているペットが年老いてきました。どんなことに気をつければよいですか?

    A.犬・猫は聴覚や視覚が衰えても、若い頃に学習した感覚で家の中を移動するので、部屋の模様替えをしないようにしましょう。周囲のものの位置やニオイが変わると、方向がわからなくなってしまいます。ケガ防止のために家具などの角はクッションで保護し、段差も極力少なくした方がよいです。
    また、認知機能が低下するとターンや後退ができなくなるので、階段の上には簡単に開かないゲートを設置し、家具や荷物の隙間など狭い場所をつくらないことも大切です。
     

    Q.多頭飼いするときに気をつけることはありますか?

    A.まず、年齢が近いと病気や介護が重なり飼い主さんの時間的・経済的負担が大きくなるので、3~4歳離れている方が望ましいです。
    犬同士は比較的仲良くなりやすいですが、大型犬と小型犬だと圧倒的な体力差があり、お散歩が大変になるでしょう。また普段は仲良しでも、食事やおもちゃが絡むと相手を噛んでしまうことがあります。何かを与える場合は片方を抱っこしたりリードにつないだりして距離を置きましょう。猫は自分の空間を保てれば、多少相性が悪くても距離を取りながら同居できることが多いです。
     

    Q.災害への備えと、自宅以外の場所に避難する際の注意点を教えてください。

    A.最も重要なのは、日ごろからキャリーケースに入る、「クレート訓練」をしておくことです。指示に合わせて出入りし、寝ることができれば、避難も速やかになり、いつもと違う場所でも落ち着いて過ごすことができます。キャリーバッグを普段からお部屋に置いておくと、自分のニオイがついて安心につながります。大型犬に関しては吠えたり噛んだりしないようしつけておきましょう。
    食事に関しても、日ごろから何でも食べられるようにしておくことが大切です。療法食の子もメーカーや味つけを時々変えて、慣れておきましょう。水分を多く含むシチュー缶などを常備し、期限が近づいたら食べさせて新たなものを備蓄するのが理想です。マイクロチップによる情報登録と、リードの予備も忘れずに。
     

    Q.皮膚トラブルにはどのようなものがありますか?原因と対策を教えてください。

    A.気温と湿度が高い時期は皮膚炎が多くなります。アレルギーに伴う皮膚炎の場合アレルゲンとしては、ハウスダストや化学物質のほか、柔軟剤も影響することがあります。エアコンを使い始めたタイミングで症状が出る子もいます。強い力でシャンプーやブラッシングを繰り返すことで皮膚の炎症を起こしてしまうこともあります。
    いずれの場合も、皮膚の異常を見つけたらまず病院で検査してください。特にアレルギーは、原因となる物質を正確に診断することが重要です。お腹をしきりになめているときは皮膚ではなく内臓疾患の疑いもあります。花粉やハウスダスト対策として、空気清浄機を使うのもおすすめです。
     

    こんなキケンにも注意しよう!

    ●ドアと床の隙間に脚が挟まって骨折
    対策:ドアの下部を広めに開けておく/引き戸にする

    ●ダイニングチェアから飛び降りた拍子に骨折
    対策:犬が椅子に乗らないよう、柵を設ける/普段からしつけておく

    ●コードを噛んで感電してしまう
    対策:コード類は見えないよう覆っておく
     

    Information

    Pet Clinic アニホス

    「命に対する真剣な対話とこころのこもったふれあいを」をテーマに、地域のペットクリニックや大学病院と連携しながら低侵襲外科や高度獣医療を提供。入院・手術・夜間救急に対応するほか、メディカルトリミングやしつけ教室も実施。

    Team HOPE

    ペットの健康診断を推奨する獣医師団体。「最良の医療は予防医療」だと考え、「ペットの健康診断の普及」「気軽に動物病院に相談する環境を整える」「ペットとの良好な共生を目指した環境づくり」という3つの活動に取り組んでいる。

    取材協力



    株式会社ストックアンドフロー
    「動物病院の待合室を、飼い主様に愛される待合室へ」をモットーに、オーダーメイドのデジタルサイネージを全国で運営。医院の案内や診療メニューなど、待合室で愛犬・愛猫を待つ飼い主へ多彩なコンテンツを提供している。

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家

    AMILIEライター

    エリア:東京都

    愛犬家住宅コーディネーター