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「日本の動物福祉を世界トップレベルに」 アニマル・ドネーションの挑戦

目次
    人と動物が幸せに共存する社会づくりに取り組むアニマル・ドネーションは、寄付だけでなく、動物業界の抜本的な改善を目指しています。活動の詳細や業界の現状を、代表の西平さんに伺いました。

    西平衣里さん 公共社団法人アニマル・ドネーション代表理事
    福岡県生まれ。株式会社リクルートで結婚情報誌『ゼクシィ』の創刊から、編集制作・クリエイティブ・ディレクターとして携わる。2011年に、日本初の動物専門寄付サイト「アニマル・ドネーション」を開始。

    「何とかしたい!」の情熱が生んだ日本初の動物専門寄付サイト

     団体立ち上げのきっかけは、私自身が犬を飼ったことでした。その子は当初お腹が弱く通院していたので、私も犬の体について調べていたのですが、その中でいかに日本の動物福祉が遅れているかを知ったのです。「知ってしまった以上、居ても立っても居られないー」前職のリクルートで培った技術を活かし、保護団体や動物に関する情報サイトをつくることにしました。

     さまざまな保護団体をリサーチするにつれ、身銭を切り生活を犠牲にしてまで活動している方も多いことを知りました。当時の私には、営利外のことにここまで熱心になれることが衝撃で、「情報サイトではなく、お金に困っている人と寄付したい人をつなげるマッチングサイトにしよう」と思い至ったのです。こうして誕生したのがアニマル・ドネーション(以下・アニドネ)です。



    西平さんの愛犬・TRU君

    アニドネ始動から10年まだまだ課題は山積み

     確かに動物殺処分の数は減ってきていますし、保護犬猫の認知度も上がっていますが、根本的には変わっていません。競売で競り落とす営利が先立った流通、悪質なブリーダーの存在、安易に飼って簡単に手放す人もいることなど、問題は山積みです。動物は時間もお金もかかるものなのに、人間側の飼育知識と覚悟の弱さを痛感しています。

     日本の法律で動物は「物」と定義されており、運輸では貨物として扱われます。一方EUでは「感受性のある生き物」と定義されており、産業動物の扱い方まで法律で細かく決められています。日本はそれに比べて100年ほど遅れている感覚です。

     もはや殺処分ゼロは当たり前で、流通も社会インフラも動物を尊重した形に改善しなくてはならないー。私たちはそう考えています。



    スイスの動物保護施設を視察。日本との違いを学びレポートも執筆した

    オンラインで寄付できるからキモチがすぐにカタチに



     一般的な寄付は振り込みが手間ですが、アニドネはオンライン決済にも対応しています。内閣府認定の税額控除対象法人なので、個人の寄付なら確定申告で4~5割が戻ります。

     寄付先となるアニドネの認定団体は、半年以上に及ぶ丁寧な審査を通過した団体です。審査過程ではスタッフが現場に行き、団体のポリシーや活動内容を確認しつつ、外部の審議も交えて総合的に判断しています。審査通過後も常に寄り添い、寄付だけにとどまらないバックアップを心掛けています。

     企業もコラボ企画や寄付付き商品でご協力くださっており、現在アニドネに集まる寄付総額の6割は企業からのものです。昨年港区のふるさと納税の対象にもなり、多くの方々が御心を寄せてくださいました。

     現在アニドネは、海外の動物福祉をリサーチして記事にしたり、セミナーを開催したり、大手ECサイトやアパレルブランドとコラボ企画をするなど、情報発信にも力を入れています。昨年は、財産を動物のために残す遺贈寄付「アニドネレガシーギフト」をはじめました。2021年は、これから動物を飼う方が飼育知識を学べる場や、動物に関わる方々がコミュニケーションを取れる場をつくりたいと考えています。

    2021年6月、遂に数値規制(※)が施行されます。一般の方々がもっと知識を持てば、ペット業界は良い方向に動くはずです。私たちも引き続き、より多くの方々に問題を伝え、世の中に正しい知識を啓発できる仕組みをつくっていきます。

    (※)数値規制:動物愛護法の下、犬猫の繁殖業や販売業におけるケージのサイズ、メスの動物の出産回数などに対し、具体的な数値を定めて規制するもの。

    動物を尊重した家づくりで家族全員がハッピーな毎日を



     保護団体が動物を譲渡する際は引き取り手の住まいを確認するほど、動物福祉と住環境は密接な関わりがあります。フローリングの床滑りで腰を悪くする犬は多いですし、動物が落ち着けるスペースが無いと無駄吠えにつながります。その点、アニドネに賛同してくださっているペットライフスタイル株式会社のペット共生住宅プラン集「PAWs Style(パウズ・スタイル)」なら、動物の特性を理解した設計で安心です。このような住宅が増えれば、幸せな動物が増えると思いますね。

     動物はただ愛でるだけのものではなく、多くの幸せや癒しを運んできてくれる存在です。私も犬から学ぶことは多く、共に生きられることにありがたみを感じています。愛犬家住宅をつくることは、動物と幸せに暮らすことへの第一歩です。ぜひ皆さんも正しい知識を学び、動物も人も幸せに暮らせる住まいを実現してください。心から応援しています。
     

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家

    勝部 千尋

    「書く・聴く・伝える」 執筆&犬猫お悩み相談『毛玉生活』運営 ライター/犬猫相談員 経歴 静岡県沼津市出身/京都芸術大学卒 大学卒業後、オーストラリアにワーキングホリデーと...

    エリア:東京都

    愛犬家住宅コーディネーター