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【獣医師監修】猫のニキビはなぜできる?原因と治し方・自宅ケアまで徹底解説

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目次
    この記事を書いた人
    葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。

    愛猫の顔や顎を触った時、ぽつりと突出したものに気づいて不安になる飼い主さんは多いでしょう。

    しかし、安心してください。実は、猫のあるあるともいえる皮膚トラブルのひとつです。

    皮膚トラブルが致命的なものにつながる可能性は低いですが、猫が気にしてこすってしまうこともあるため、早めのケアや生活環境の見直しが大切です。

    猫のニキビとは?顎にできる黒いブツブツの正体

    猫のニキビとは?顎にできる黒いブツブツの正体

    猫とスキンシップをとっているときに、顎の部分に黒いぶつぶつを見つけたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

    虫!?皮膚炎!?と慌てて受診を検討しているうちに、自然に消えてしまうケースも多いです。

    通称「顎ニキビ」とも呼ばれ、猫にはよく見られる皮膚トラブルです。

    強い炎症が起こるわけではないですが、猫によってはかゆみなどを感じて顎を硬いものにこすりつける行動が見られるかもしれません。

    「顎ニキビ」は正式には「ざ瘡」と呼ばれ、毛穴に皮脂や汚れ、角質などが詰まることで起こります。黒いぶつぶつの正体は、汚れなどが詰まった毛穴なのです。

    猫にニキビができる主な原因

    猫にニキビができる主な原因

    「顎ニキビ」の原因はさまざま。

    生活環境や体質、皮膚のコンディションなど複数の要因が重なって起こることが多く、知らず知らずの習慣や猫の特性が原因になっているかもしれません。

    皮脂の分泌が多い・汚れが溜まっている

    皮膚の性状には個体差があり、皮脂分泌が多い猫や、よだれで顎が汚れやすい猫は顎ニキビになりやすい傾向があるでしょう。

    顎ニキビは、皮脂や汚れの詰まりが原因となることが多いので、こまめに拭き取るなどして顎付近を清潔に保つことが予防につながります。

    食器の汚れ・雑菌(プラスチック製の食器は注意)

    ごはんや水を入れている器には雑菌が繁殖しやすく、汚れが顎に付着してニキビの原因になることがあります。

    特にプラスチック製は傷がつきやすく雑菌が増えやすいため、ステンレスなど衛生的な素材がおすすめです。

    ごはんや水の与え方は家庭によって異なりますが、置きっぱなしになりやすい器や給水器は見直すことで清潔を保ちやすくなります。

    例えば、下のような給水器などもありますので、参考にしてみてくださいね。

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    毛づくろい(グルーミング)不足

    猫といえば、やわらかい体を駆使して、体の隅々までグルーミングを行う習慣を持っている子がほとんどでしょう。

    しかし、中には体調不良によってグルーミングが行えなかったり、加齢とともに関節の違和感や痛みが生じることで、頻度が減ってしまうことも。

    その結果、汚れが皮膚に付着したままになり、顎ニキビの原因となってしまう場合があります。

    特に、中高齢や体調を崩した後に顎ニキビが増える場合は、グルーミング不足が関係している可能性があります。

    ストレス・免疫低下

    猫はストレスに敏感で、人には些細なことでも強いストレスになることがあります。

    ストレスが続くと食欲不振や排せつの乱れなど体調不良を招き、免疫力が下がることで皮膚状態の悪化につながることも。

    愛猫のストレスサインに気づき、全身状態の悪化につながらないよう、早めに原因を取り除くことが大切です。

    ストレスサインが見つけづらい場合は、以下の記事も参考にしてください。

    アレルギー・ニキビダニによる炎症

    免疫力や皮膚コンディションの不安定さにより、ニキビダニと呼ばれる毛穴に寄生する外部寄生虫が炎症を起こし、より皮膚の状態を悪化させることもあります。

    アレルギー体質の猫も、身近なアレルゲンによって皮膚が常に刺激され、汚れや皮脂が詰まりやすく黒ずみの原因になるため注意が必要です。

    皮膚のコンディションを健全に維持できるよう、愛猫の皮膚の傾向を把握したうえで、少しでも変化があったら早期に対応するよう心がけましょう。

    自宅でできる猫のニキビケア・悪化させない方法

    自宅でできる猫のニキビケア・悪化させない方法

    ニキビに気づいたら、まずは悪化させないよう正しいケアを行うことが大切です。

    気になるあまり過度に触れたくなるかもしれませんが、誤った対応は症状を悪化させる原因になります。

    ニキビは無理に取らずぬるま湯で優しく拭く

    ぶつぶつとしたニキビは、つい爪でこすったり、無理に落としたくなってしまう飼い主さんもいるかもしれません。

    しかし、無理に取ろうとすると皮膚を傷つけて悪化させてしまう危険性があるためおすすめできません。

    また、アルコールなどが含まれる除菌シートや消毒薬を使うと、刺激を与えて悪化する場合もあるため、猫が驚かないような温度のぬるま湯で優しく拭き取ってあげましょう。

    人間用のニキビ薬はNG!必ず専用の薬を使用

    気になるからといって、人間用のお薬を使用することはおすすめできません。治りづらくなってしまったり、悪化してしまうこともあります。

    必ず動物病院を受診のうえ、専用の薬を処方してもらいましょう。

    繰り返す場合、猫にとって都度受診をすることは難しいかもしれません。

    その場合は、かかりつけの先生に伝え、常備薬として処方してもらえるか相談するのもおすすめです。

    フードや水の器を変えてみる|素材や高さの見直し

    食器の素材や形状によって雑菌の繁殖しやすさや、口周りに汚れが付く程度は変わります。

    例えば、置きっぱなしにする水やごはんであれば、プラスチックなど溝や傷がついて、隙間に汚れなどが入り込んで雑菌が繁殖してしまう場合もあるため、素材はより雑菌の繁殖しにくいものを選ぶべきです。

    飼い主さんのライフスタイル、愛猫の摂食や飲水スタイルによって器を変えてみると良いでしょう。

    また、飲水器やフードボウルの使いにくさによる汚れなどが原因なのであれば、高さや形状などを工夫してみることをおすすめします。

    飲水器の場合は、循環するタイプのものを使用しても良いかもしれません。

    フードの見直しや体質改善

    皮膚の健康を保つためには、皮膚に良い成分を含むフードや、アレルギーの可能性がある場合はアレルゲンを含まないフードを選ぶことが有効です。

    チキンなどのタンパク質はアレルゲンとなり得る可能性が高いですが、それ以外にもアレルゲンは多くあります。

    検査をせずにアレルゲンを特定することは難しいので、アレルギーが疑われる場合はかかりつけの先生と相談して、愛猫にアレルゲン検査が必要かどうか確認しましょう。

    また、ブラッシングをこまめに行うことや、シャンプータオルなどで皮膚を清潔に維持することも大切です。

    ぜひ以下の記事も参考に、家庭でケアを行ってみてくださいね。

    動物病院を受診するべき症状の目安

    動物病院を受診するべき症状の目安

    どんなに生活環境を見直しても、皮膚や猫の状態によって悪化してしまう場合もあります。

    悪化によって痛みやかゆみなど、猫への負担が見られたり、皮膚だけでなく他の器官への問題につながってしまう場合もあるでしょう。

    しかるべきタイミングで受診をすることは大切です。

    軽度|1〜2週間程度で改善

    軽度ニキビであれば、黒ずみに気づいてから自然に消えていたり、顎周りを清潔にするなどの対策をすることで、1〜2週間程度で改善されることがほとんどです。

    皮膚状態や免疫が安定している場合は、汚れや皮脂によって黒ずみが現れても、治療なしに猫自身の持つ力で自然に消失してしまうこともあります。

    発赤などもなく猫自身も気にしていないようであれば、生活環境の改善や顎を清潔に保ちながら様子を観察してあげてください。

    日常のスキンシップの一環としてこまめな観察が大切です。

    中度|赤みや腫れが広範囲に広がる

    顎部分に限定的にできることが多いですが、炎症が悪化し、キズ状になると赤みや腫れを伴い、顎だけでなく首や耳の下などに広がる場合があります。

    治療しなくても改善される場合もありますが、悪化してしまう可能性が高いので、様子を見ずに受診をすることをおすすめします。

    かゆみや痛みなどは猫にとって大きな負担になります。

    体へのストレスとして元気消失や食欲不振につながる場合もあるため、できるだけ早めに解消しましょう。

    重度|膿やニオイ、出血が見られる

    ニキビを気にしすぎて掻いたり顎をこすりつけることで、外傷になってしまうことがあります。

    その場合、出血や感染を起こして化膿したり、悪臭がするケースがあります。

    悪化することで全身に感染が広がってしまい、致命的な問題につながることも考えられるでしょう。

    食欲不振や不快感によって、全身状態の悪化が起こる可能性も高いので、すぐに受診するよう心がけましょう。

    猫のニキビと間違えやすい皮膚病

    猫のニキビと間違えやすい皮膚病

    顎ニキビであれば、猫自身の免疫力で自然に治る場合もありますが、違う病気の場合は早期の対応が必要になることも。

    似たような症状が見られる皮膚トラブルはいくつかあります。

    飼い主さんの判断で、猫の顎ニキビと断定してしまうことは、悪化や猫への負担につながる場合もあります。判断が難しい場合は受診をすることが大切です。

    好酸球性肉芽腫群

    猫のアレルギー反応などが関連するといわれている皮膚トラブルです。いくつかの病気の総称であり、病気によって見られやすい部位が異なります。

    特に無痛潰瘍と呼ばれる唇付近に見られる潰瘍や、好酸球性プラークと呼ばれる皮膚の盛り上がりができるトラブルであれば頸部によく見られるなど、顎ニキビが現れやすい部位と近い好発部位であ

    ため、勘違いしてしまう可能性もあるでしょう。

    無痛潰瘍であれば痛みや違和感は感じにくく、好酸球性プラークであれば強いかゆみを伴う可能性が高いです。

    投薬による治療やアレルゲンが明確である場合は、アレルゲン除去のための生活改善が必要なので、動物病院を受診する必要があります。

    膿皮症

    膿皮症は、皮膚表面の免疫バランスが不安定になり、細菌が異常増殖することによって起こるトラブルです。

    軽度のものであれば、猫自身の免疫力によって改善されることもありますが、悪化すると患部が広がり、かゆみや違和感を伴うケースもあります。

    症状は発疹が見られることが多く、中心部に膿を持っているように見える場合もあります。

    改善とともに、かさぶたになりフケのように剥がれ落ちることが多いです。患部を清潔に維持することと、悪化するようであれば投薬による治療が必要です。

    皮膚糸状菌症

    皮膚糸状菌症は感染性の皮膚疾患であり、発赤や脱毛が見られます。

    強いかゆみを伴い、ほかの猫や飼い主さんにも感染を広げてしまう可能性があるため注意が必要です。

    糸状菌症自体、強い発赤や脱毛が見られることが一般的ですが、かゆみを気にしてこすりつけたりすると、黒っぽく汚れが付着して顎ニキビと勘違いしてしまう可能性もあります。

    皮膚糸状菌症であれば、自然に治癒する可能性もありますが、感染が広がってしまうことで大きな問題となり得るため、疑わしいと感じたらすぐに受診することをおすすめします。

    また、皮膚糸状菌症であることが確定したら、速やかに猫の生活環境を隔離し、触った後はよく手洗い消毒をすることや、触った前後で洋服を変えるなどの配慮が必要です。

    愛猫をよく観察しニキビを見つけたらすぐ対処しよう!

    猫と生活していると、よく出会う可能性のある「顎ニキビ」ですが、放っておくと悪化し、猫の皮膚や体に負担をかけてしまうこともあるでしょう。

    また、顎ニキビと思っていても、実はほかの病気だったという可能性も考えられます。

    スキンシップの一環として、日常的に愛猫をよく観察する習慣をつけ、早期に発見をしてすぐに対処できるようにすることがおすすめです。

    定期的な健康診断も早期発見や生活環境の見直しのためにとても有意義です。ぜひ、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

    この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
    葛野 莉奈

    獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。

    興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。