目次
「犬が熱中症になり命を落としてしまった」というニュースがよく見られるようになった昨今、夏の暑さ対策に一段と気を遣う飼い主さんも多いのではないでしょうか?
「自分たちの行なっている暑さ対策は正しいのか?」と不安に思うこともありますよね。
犬は人間よりも暑さに弱く熱中症になりやすいため、夏場は特に注意が必要です。
この記事では認定看護師の資格を持つ筆者が、犬のおすすめの暑さ対策や注意点のほか、やってはいけない暑さ対策についても解説していきます。
犬も夏の暑さ対策が必要な理由
犬は体温調節をするための汗腺が足裏と鼻先にしかなく、人間よりも体温調節が苦手です。
人間は全身に汗をかいて体温を下げますが、犬は「パンティング(口を開けてハアハアと呼吸すること)」で体温を下げています。
家の中に居ても環境によっては熱中症になる可能性があります。愛犬の熱を逃がしてあげるためには、正しい知識での暑さ対策が必要です。
年齢・犬種・特徴による暑さ対策の注意点
犬の年齢・犬種・特徴による暑さ対策の注意点を6つに分けました。それぞれ見ていきましょう。
鼻が短い犬種(短頭種)
フレンチブルドッグやパグ、シーズーなどのいわゆる「鼻ぺちゃ犬」を「短頭種」と呼びます。フガフガと言うような呼吸が特徴の短頭種ですが、この荒い呼吸音は呼吸が上手くできていない証拠でもあります。
短頭種は「空気の通り道となる“気道”が狭く鼻が短い」という身体の構造が特徴的です。犬は、体内にこもった熱を唾液や鼻水に混ぜ「ハアハア」と呼吸して気化することで熱を逃がし体温を下げます。短頭種の場合、呼吸が上手くできないため体温調節も効率よくできません。そのため、熱中症になりやすいと言われています。
神経質になりすぎる必要はありませんが、興奮させすぎない・減量をする・暑い時間の散歩を避ける・住環境を整えるなどの暑さ対策に一段と気を遣ってあげましょう。
子犬
生後10か月頃までの子犬は、成犬に比べて体温調整が苦手です。暑さに弱いだけではなく冷房で冷えすぎて体調を崩すことも多いでしょう。暑さから守るために「冷やす」だけでなく、「冷えを避けられる場所」も用意してあげてください。
愛犬が潜り込めるように丸めたブランケットを置いてあげたり、冷房の風が当たりにくい場所にベッドを置いてあげたりするのもおすすめです。
シニア犬
犬は高齢になると体温調節機能も衰え、「暑い・寒い」という感覚も鈍ります。暑いときに自分から涼しい場所に移動することも少ないです。そのため、飼い主さんが愛犬を涼しい場所に移動させてあげたり、ひんやりグッズや空調に気を遣ってあげたりしましょう。
また、足腰が弱ることから飲水に行く頻度も減ります。フードに水分を含ませる・ウェットフードをあげる・口元に水をつけて飲水を促す・手やシリンジなどで水をあげるなどして積極的に水分を摂らせてあげたり、きれいな水がいつでも摂れる環境を整えてあげてください。
肥満体型の犬
肥満体型の犬は厚い皮下脂肪が熱を外に逃がすのを邪魔するため体温調節が苦手です。また、首回りの脂肪が気道を圧迫し、パンティングによる体温調節がしづらくなります。肥満体型の犬は、暑さ対策をしながら無理のない範囲でダイエットをさせましょう。正しい知識で健康的にダイエットをさせるなら、動物病院で相談しながら進めるのがおすすめです。
寒冷地が原産の犬種
寒い地域の犬は、身体を寒さから守るため被毛が厚く、体に熱がこもりやすいです。シベリアン・ハスキー、サモエド、秋田犬、北海道犬、セント・バーナードなどが寒冷地原産の犬にあたります。暑さが非常に苦手なため、暑さ対策には十分な注意を払いましょう。体調をよく見つつ、エアコンや扇風機を使って室温を20~25℃くらいに保つようにしてあげてください。
ダブルコートの犬種
被毛が上毛と下毛の2層になった構造を「ダブルコート」と言います。チワワ、ポメラニアン、ゴールデン・レトリーバーのほか、柴犬や甲斐犬などの日本犬全般がダブルコートの犬種にあたります。毛皮を2枚着ているような状態のため、熱がこもりやすく暑さに弱いです。室内外問わず暑さ対策には十分に気を付けましょう。
自宅での犬の暑さ対策おすすめ5選
ここでは、自宅での犬の暑さ対策を5つまとめました。順番に紹介します。
エアコンを快適な温度でつける
犬の快適なエアコンの温度設定は23~26℃です。温度を下げ過ぎるとかえって体調を崩す原因にもなるため、愛犬の様子をよく見ながら温度調節をしましょう。また、湿度にも気を使って50〜60%になるように調整してあげてください。
きれいな飲み水をいつでも飲める状態にする
水分補給は脱水を防ぐだけでなく体温を下げる効果もあると言われています。いつでも水を飲めるようにたっぷり用意してあげましょう。夏場は水が傷みやすいため、飲み水は1日2回ほど交換してあげてください。また、浄水機能や循環機能が付いている給水器を使うのもおすすめです。
特におすすめなのは「ペット用オートフィーダーアンドファウンテン」です。
給餌器と給水器が一緒になっており、給水器はファウンテン式で常にフィルターを通ったきれいな水が循環しています。
水分を摂らせてあげる
犬によっては水をあまり飲まない子もいます。特にシニア犬になると、水を飲みに行くのも億劫になってあまり飲まない子もいるでしょう。気付かないうちに脱水症状に陥ると危険です。水をあまり自ら飲まない子には、以下のように“水分を摂らせてあげる工夫”もしましょう。
✔ごはんに水分を含む
✔ウェットフードをあげる
✔手で水を飲ませてあげる
✔愛犬の口周りに水滴をつけてなめさせてあげる
ひんやりグッズを使う
犬はひんやりした床にお腹を触れさせて涼もうとすることがあります。愛犬の好きなタイミングで涼めるよう、ひんやりグッズを使うのがおすすめです。特に人気なのが「やわらか冷感マット」です。
プニッとした感触の特殊ジェル素材でできているため、犬たちはほどよく体を涼ませながら快適に寝そべられます。
ひんやりグッズを使う際は、愛犬の好みをよく見極めて使いましょう。
窓まわりの暑さ対策グッズを活用する
住まいを工夫することも犬の暑さ対策において重要です。愛犬にとって快適な住環境を作ってあげることは、愛犬のストレス削減にも繋がります。おすすめなのは窓まわりの暑さ対策です。シェード、遮熱カーテン、複層ガラス、内窓など、住んでいる家に合うものを探してみてください。
ちなみにシェードで人気があるのは「スタイルシェード」です。デザインがスタイリッシュでインテリアにも馴染みやすく、コンパクトに収納で
きるため気軽に暑さ対策ができます。
また、住宅用塗料もおすすめです。外からの熱侵入を防ぎ室内の涼しい空気を外に逃がさない役割があるため、愛犬にとってだけでなく人間にとっても快適かつ節約にもなるでしょう。
気になる方はこちらの記事を参考にしてみてください。
ペット愛好家の悩みをまるごと解決! 住宅用塗料「ガイナ」が選ばれる理由
犬の暑さ対策をしないとどうなる?
犬は人間よりも暑さに弱いため、暑さ対策を怠るとすぐに熱中症になってしまいます。
犬たちは自分の口で体調を伝えられません。飼い主さんが愛犬の体調不良や夏バテに気づいてあげられなければ、命に関わる危険もあります。
私たち飼い主は、暑さ対策はもちろん「暑い」と感じているときの小さなサインも見逃さないようにしましょう。
犬が「暑い」と感じているときのサイン
犬が「暑い」と感じているときのサインには、以下のようなものがあります。✔「ハアハア」という苦しそうな荒い呼吸(パンティング)
✔水をガブガブと飲む
✔ほとんど動かずぐったりしている
✔冷たく感じる床にべったりと張り付く
✔頻繁に寝る場所を移動する
✔吐き気・下痢など消化器系の症状がみられる
✔舌の色が悪い(正常時:ピンク 異常時:赤や紫っぽい)
✔ふるえや発作がある
「暑い」と感じているときのサインが見られたら、エアコンの温度を調節したり涼しいところに動かしてあげたりなどして様
子を見ましょう。
ぐったりしている・吐き気や下痢・舌の色が悪い・ふるえや発作など、明らかに体調が悪そうな場合は早急に病院に連れて行ってあげてください。
愛犬に熱中症が疑われるときの応急処置
熱中症は数分数秒の差が命取りになります。熱中症疑いのサインが見られたらすぐに動物病院へ駆けつけましょう。病院への移動時間も危険は増します。以下のように、病院に行くまでの間にもできる限り体温を下げる処置をしましょう。
- 涼しい風通しの良い場所に移動させる
- 氷嚢や氷枕など冷やせるもので身体を冷やす(首・股関節・脇など太い血管が通っている場所を重点的に冷やすと効果的)
- 冷却グッズがすぐに用意できなければ、シャワーで水を体にかけてあげる
これはNG!犬の暑さ対策でやってはいけないこと
間違った暑さ対策は愛犬を危険にさらします。ここでは、犬の暑さ対策の観点で「やってはいけないこと」をまとめました。
昼間に外へ散歩に行く
夏の昼間は気温が非常に高く地面も熱いです。アスファルトの地面は熱されやすいため、肉球の火傷にも繋がります。また、犬は体から熱を逃がすのが苦手なため、昼間は外にいるだけですぐに体温が上がり熱中症になります。
夏場の散歩は、適度な涼しさがある早朝や日が落ちて涼しくなった夕方に行くのがおすすめです。
エアコンを強めすぎる
エアコンを強め過ぎたときに危険なのが「クーラー病」です。室内外の温度差で自律神経が乱れたり、エアコンの風で室内が乾燥し脱水症状に陥ったりなど、体調を崩してしまいます。エアコンの温度は常に適温を意識しましょう。(犬の適温設定は23~26℃がおすすめ)
サマーカットで被毛を薄くしすぎる
夏仕様に被毛を短くしたサマーカットでは、愛犬が涼しく過ごせる反面デメリットもあるため注意が必要です。犬の被毛には、紫外線や害虫から皮膚を守る役割があります。被毛が薄すぎると、皮膚が日光や紫外線を過度に浴びてしまいます。薄く繊細な犬の皮膚は刺激に弱いため、皮膚炎やシミの原因になりかねません。また、被毛が薄いことでノミやダニなどの害虫から刺される危険性も高まります。
夏場にトリミングに行く際、極端なサマーカットは避けましょう。
服を着せて日焼け対策をする
被毛で覆われた犬の身体は服を着ることで熱がこもりやすくなります。人間は日焼け対策に長袖やアームカバーを着用しますが、犬には逆効果です。散歩で外に出る際は、服で“日焼け対策をする”よりも“散歩に行く時間を工夫”しましょう。
冷たい食べ物や飲み水ばかりをあげ過ぎる
冷たい食べ物や飲み水をあげるのは暑さ対策になります。しかし、あげ過ぎて体を冷やし続けるとお腹を壊すリスクもあります。下痢をすると体から水分が奪われるため、脱水症状を引き起こし危険です。
水は常温で与え、極端に冷たい食べ物を与えすぎないようにしましょう。
散歩にまったく行かない
暑いからといってまったく散歩に行かなくなると、運動不足やストレスの原因になります。気分転換や日々の適度な運動も犬の健康にとって重要です。夏場の散歩は「行かない」のではなく「時間を工夫して」連れて行きましょう。
長時間の水遊び
水遊びで涼ませてあげるのは暑さ対策になりますが、長時間の水遊びは危険です。水で体が冷やされ続けると低体温症を発症し、最悪の場合、昏睡状態にまで陥ることもあります。水遊びは15分ほどで切り上げ、水遊び後はすぐに身体を乾かしてあげましょう。
正しい知識と対策で愛犬を暑さから守ろう
正しい知識で暑さ対策をすることは、愛犬の命を守ることにも繋がります。空調に気を遣う・散歩の時間の工夫・きれいな水をいつでも飲めるようにするなどの基本的な暑さ対策は、一緒に住む家族間でも共通認識にしておきましょう。
また「住環境の工夫」も暑さ対策になります。ひんやりグッズで愛犬の住環境を整えてあげたり、窓まわりの暑さ対策をしたり、ご自宅に合う方法をぜひ試してみてください。
夏場でも愛犬と一緒に飼い主さんが涼しく健康的に過ごせるよう、この記事が参考になれば幸いです。
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家