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目次
獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。
愛犬と長年生活をしていると、お口からいつもと違う臭いがしたり、かかりつけの動物病院での口腔チェックで指摘されたり、口腔トラブルで悩むという経験は多いでしょう。
大きなトラブルを防ぐために、家庭でのケアは欠かせません。
歯石の付着は、除去するために麻酔をかける必要があるなど、全身の状態にも大きく関わります。
歯石について正しい知識を得て、適切なケアを行いましょう。
犬の歯に歯石がつく原因とリスク

歯石の付着は愛犬の健康にも大きく関わるということはよく知られています。
しかし、具体的に歯石とはどんなものか、放置するとどんな問題が生じるかまでは知らない方も多いのではないでしょうか。
歯石についてしっかりと知識を得ることで、万全な歯石対策につながります。
歯垢と歯石の違いとは?
何気なく「歯垢」と「歯石」という言葉を使っていますが、それぞれの違いを知っていますか?
どちらも細菌からなるものですが、少し異なります。
ごはんやおやつなどを食べた汚れが口の中に残っていると、これらに細菌が集まり唾液と結びついてかたまりを作ります。このかたまりが「歯垢」です。
歯垢が時間経過とともに石灰化して硬くなることで「歯石」となります。
犬は数日から1週間程度で歯垢から歯石へと変化するとされていて、人間よりも歯石に変化するスピードが速いため注意が必要です。
歯石ができる主な原因
口腔内に食べもののかすや汚れが残っていると、細菌の栄養源となり口腔内で増殖します。
口腔内の歯垢が除去されずにいると、石灰化で硬化し歯石となります。
歯石の付着のしやすさは、口腔内環境や食生活が大きく影響しているため、以下に注意が必要です。
- 歯並びによる歯垢の蓄積のしやすさ
- 唾液の減少により口腔内の細菌に対する清浄化や免疫機能の低下
- ウェットフードなど歯の間に入って除去しにくいものを食べている
他にも考えられる原因はありますが、上記のように口腔内に汚れが残りがちであることや、細菌が増殖しやすい条件があると歯石の原因となりやすいでしょう。
歯石を放置するリスク
歯石は口腔内のトラブルというイメージが強く、致命的な問題になりにくいと誤解されがちです。
歯石が付着していることで、歯周病の原因になり、歯が抜けたり歯周病菌が全身へと広がってしまう場合があります。
歯周病になると以下のことが起こり得ます。
- 歯が抜ける
- あごの骨や副鼻腔に細菌が広がる
- 血流にのって細菌が全身に広がる
歯が抜けてしまうことを知っている飼い主さんは多いのではないでしょうか。
歯石によって起こる歯周病が引き起こす問題はそれだけではありません。
歯石が歯周ポケットと呼ばれる歯と歯肉の間を塞ぐことで、細菌は歯根部からあごの骨や副鼻腔へと広がり、膿を溜めたり骨折へとつながります。
さらに血流にのって細菌が全身に広がり、心臓や肝臓などの器官で細菌性心内膜炎などのトラブルを引き起こし、致命的なダメージにつながるリスクがあるのです。
全身に細菌を広げないために、歯石の予防や早期の歯石除去が不可欠です。
犬の歯石を防ぐには?基本の予防法

全身の問題へとつながり得る歯石の付着を防ぐためにはどうしたらよいのでしょう。
歯石の原因となる歯垢を蓄積させないための、毎日のケアが大切です。
毎日の歯磨き習慣
歯石を付着させないために一番大切なことは、毎日の歯磨き習慣です。
しかし、多くの犬が口周りを触られることや歯ブラシを入れられることを嫌がります。
ご家庭にお迎えした子犬のうちから、徐々にスキンシップの一環として慣れさせていくことが大切です。
最初からしっかりと歯みがきができる必要はありません。口周りを触ることや、指を口に入れても嫌がらないように慣らすことから始めましょう。
歯ブラシだけでなく、便利なアイテムもあります。
例えば、おいしい味の歯磨きジェルを使用し、指先にジェルを塗った状態で舐めてもらうようにすると、口の中が触りやすくなるでしょう。
慣れてきたら指サック型の歯ブラシを使用するなど、徐々にステップアップが可能です。
最終目標は歯ブラシで毎日歯みがきをすることですが、歯磨き時間が楽しくなるアイテムに頼りながら、少しずつ挑戦していきましょう。
ぜひこちらの記事も参考にしてみてくださいね。
歯磨きガム・デンタルおやつの活用
歯石予防には歯ブラシでの歯磨きが一番効果的ですが、習慣化が難しかったり、愛犬の性格によっては難しい場合もあります。
完璧な歯磨きができるようになるまでの、練習している途中の段階でも、毎日のご飯で歯垢や歯石は蓄積するため対策が必要です。
歯石の原因として口腔内の環境や汚れの蓄積が挙げられますが、改善をサポートをしてくれるガムやおやつも市販されています。
歯磨きの補助的なアイテムとして活用してもよいですが、使い方にはポイントがあります。
噛むことで汚れを付着しづらくするようなガムなどは硬いため、消化にあまりよくない傾向があります。
与えたままにして噛ませるのではなく、飲み込まないように短くなったら取り上げるようにしてあげてください。
飼い主さんが持った状態で噛む歯をコントロールすることも効果的です。
噛むおもちゃで自然な歯磨き
歯磨き代わりに使用できるおもちゃもあります。
デンタル用として市販されているおもちゃもあれば、ロープなど愛犬が気に入ったものを歯磨き代わりに使用してもよいでしょう。
毎日噛んで遊ばせる習慣をつけることで、自然に汚れが落ちる場合もあります。
しかし、おもちゃが硬すぎたり長時間噛ませたりすることで、歯が摩耗して歯髄と呼ばれる神経や血管部分が露出してしまうと、炎症や感染につながる危険性があるため注意が必要です。
愛犬の歯の状態や噛む力に適したおもちゃを選び、噛む時間もコントロールしましょう。
動物病院でのスケーリング(歯石取り)と頻度

歯石は歯垢が石灰化して硬くなったものなので、付着してしまうと完全に除去するためにはスケーリングが必要です。
動物病院で行うと、麻酔をかけるイメージもあり、躊躇してしまう飼い主さんや自宅でできないものかと悩む飼い主さんもいるでしょう。
健康な口腔内を維持するために、スケーリングはどのような位置づけにすべきなのでしょうか。
定期的なスケーリングが大切
毎日のケアは大切ですが、歯磨きだけで完全に歯石を付着させないようにすることは難しいでしょう。
付着してしまった歯石は定期的にスケーリングによって除去が必要です。
成長や口腔内環境の変化とともに歯周ポケットと呼ばれる部分が深くなり、歯垢や歯石が入り込むようになります。
麻酔なしのスケーリングの場合、表面に付着した歯石を除去できる可能性は高いですが、歯周ポケットに入り込んだ歯石を除去することは難しいです。
歯周病の予防として行う場合、麻酔下でのスケーリングをおすすめします。
スケーリングの頻度は、犬の口腔内環境や家庭でのデンタルケアの程度によって異なります。
定期的にかかりつけの動物病院で口腔内のチェックをしてもらうよう心がけましょう。チェックの上で、スケーリングの頻度を相談すると安心です。
自宅で歯石取りはできる?
動物病院で麻酔下で行うスケーリングは、超音波スケーラーという機械を用います。その他、人間の歯科で使用するハンドスケーラーと呼ばれる器具もあります。
先がとがっていて、こすりながら歯石を削る器具であり、入手することはできると思います。
しかし、器具の先端がとても鋭利で口腔内を傷つけてしまう危険性があり、飼い主さんが使用することはおすすめできません。
家庭で行おうとすると、犬が嫌がって暴れるなどして、大量に出血するなどの大きなトラブルにも発展する可能性があります。
基本的に、歯石除去は動物病院や犬の歯科専門病院で行い、家庭ではデンタルケアを行うよう心がけましょう。
犬種・年齢別の歯石予防のポイント

どんな犬でも歯石付着の可能性がありますが、歯並びやあごの大きさ、食生活や加齢による口腔内の環境変化により、歯石のつきやすさが変化する場合があります。
愛犬に適した歯石予防のポイントを理解しましょう。
小型犬は歯石が付きやすいので注意が必要
小型犬の中でも、チワワやパピヨン、トイプードルなどはあごが小さく歯が密集しているため、歯垢がたまりやすく注意が必要です。
あごが小さいと、乳歯の生え変わりが上手に行われず乳歯遺残になることもあり、永久歯と乳歯が重なって生え、間に歯垢が蓄積してしまう場合があります。
そのため、若齢から歯石がつき治療が必要となるケースもあります。特に子犬のうちから、口腔内のチェックやケアをする習慣をつけることが大切です。
乳歯遺残が分かった場合、歯石の付着につながることが多いため、抜歯をするなど早期の治療を心がけましょう。
高齢犬のケア方法・注意点
加齢とともに口腔内の環境も変化し、シニアでは唾液量が減少し、ドライマウスと呼ばれる状態に陥ります。
歯垢などの汚れの自然な除去がしにくくなり、口腔内の免疫機能も変化して歯石が付着しやすくなる傾向があります。
また、今までのデンタルケアの行い方によって、歯周ポケットが深くなっている子など、歯周病へのなりやすさにも個体差が現れるため注意が必要です。
歯石の付着から食べづらさによる食欲不振、歯周病の悪化に伴う全身性のトラブルなどが起こると、全身状態の悪化が起こり致命的なダメージにつながる危険性もあるでしょう。
家庭でのケアの徹底と併せて、動物病院での定期的なチェックとスケーリングを行うことをおすすめします。
持病によっては麻酔のリスクを考慮しなければなりません。
定期的な健康診断も行いながら、かかりつけの先生からのアドバイスをもらいましょう。
子犬からの習慣づくりが重要
健康的な口腔内環境の維持はとても大切であり、愛犬の一生を通じて向き合うことが必要です。
家庭に迎えた子犬のころから、お口のチェックやデンタルケアを行う習慣作りが大切です。
毎日のことなので、飼い主さんも愛犬もストレスフリーであることは重要なポイントではないでしょうか。
おすすめの方法やグッズをご紹介している以下の記事も参考にしてみてくださいね。
家庭で使えるおすすめデンタルケアグッズ
ここからは実際に家庭で使える、おすすめのデンタルケアグッズをご紹介します。
犬用歯ブラシ・歯磨きジェル
オーラバイオブラシ

やわらかく細い毛が密集しているので、デリケートな歯肉でもこする際に傷つけにくい構造をしています。
毛先の長さも3段階ありヘッドの大きさも選べるため、歯周ポケットの深さやあごの大きさによって使いやすいものを選べます。
愛犬に最適なものが見つかる可能性が高いでしょう。
PETKISS 歯みがきジェル

目的に応じて、口臭を目立ちにくくさせられる香りのついたものとおいしい風味のついたもので使い分けることが可能です。
特に歯磨きデビューで、おいしいジェルを使用してデンタルケアの時間を楽しいものにしたい飼い主さんや犬におすすめです。
デンタルガム・おやつ
ables 02 マルチ乳酸菌&ビフィズス菌ガム ショート14本

デンタルガムとして、歯垢を除去しやすくする働きが期待できることに加え、乳酸菌やビフィズス菌が含まれているため、免疫力維持や健康な腸内環境づくりのサポートも期待できます。
より健康な体づくりを目指したい飼い主さんにおすすめです。
噛むおもちゃ
M-PETS COTO ボーン

天然コットン素材で作られたロープのおもちゃで、毎日楽しく噛んで遊びながら、歯磨きができるアイテムです。
ひっぱりっこを一緒にするなどのコミュニケーションで信頼関係を築くこともできます。初めてのおもちゃとしてもおすすめです。
毎日のケアで愛犬の歯と健康を守ろう
愛犬と少しでも長く一緒にいたい、健康に長生きしてほしい…というのは飼い主さんの願いでしょう。
健康に長生きするためには食事をとることが大切であり、食生活を楽しむためには健康な口腔環境が不可欠です。
口腔内環境を健康に維持するために、毎日のケアはとても大切です。
しかし、お互いにケアが大きなストレスとなっては負担が大きくなってしまいます。
適切なケアアイテムを見つけ、スキンシップの一つとして毎日のデンタルケアが行えると良いですね
獣医師。動物病院、会員制電話相談動物病院などを経て動物病院を開院。
興味がある分野は、皮膚科や産科、小児科。12頭の犬、3匹の病院猫と生活する。




