目次
平和的なボディランゲージ
カーミングシグナルとは?
犬たちが発する平和的なサインを、「カーミングシグナル」と呼びます。落ち着く、静めるという意味の「Calm」と、合図という意味の「Signal」の単語を組み合わせた言葉です。
これは、1990年代にノルウェーで犬の訓練学校を運営し、たくさんの犬たちを観察してきたトゥリッド・ルーガスという女性が発見した、犬達が発する平和的なサインです。
カーミングシグナルは犬のボディランゲージのひとつで、声や動作、体の状態などで自分がストレス状態にあることを相手に示し、緊張状態を回避、緩和することが目的だといわれています。
不安を相手に伝えるシグナル
カーミングシグナルには様々なものがありますが、不安を感じていることを相手に伝えるものがあります。それぞれのシグナルを解説していきます。
そっぽを向く、目線をそらす
そっぽを向いたり、目線をそらすというのは、興奮している相手を落ち着かせたい、敵意がないことを知らせる行動です。
他の犬に出会った時や人が上から覆いかぶさったり、早いスピードで近づいてきたときなどに見られる行動です。
例えば、犬を叱るときに目を見ながら話しているときに、目をそらしたりするときは、怒られることに不安を感じているのです。
床や地面のニオイを嗅ぐ
床や地面のニオイを嗅ぐというのは、犬がその場所の情報を収集するために見られる行動のひとつです。
自分や相手を落ち着かせようとする場合にも見られます。
例えば、犬同士や人と出会った時に周囲を歩きまわりながらニオイを嗅いでいる場合には、不安を感じているということです。
体を振る
自分に向かって近づいてくる人間や他の犬に対して、不安を感じているときにするのが体を振るという行動です。
水に濡れているわけでもないのに、体をブルブルと振る場合には、不安を感じている可能性があります。
ストレスを感じた嫌な気分を表しており、このボディランゲージをすることで気持ちを落ち着けています。散歩中にリードを強く引いたら体を振る場合などがこれです。
ただし、怯えている相手に対して、自分が敵意を持っていないことを表すときにも使います。
自分の口や鼻を舐める
自分の口や鼻を舐める行為は、不安を感じている自分を落ち着かせるときにするボディランゲージです。
これを他の犬に対してする場合には、緊張をほぐそうとするサインで、敵意がないことの現れです。
例としては、突然抱きしめられたり、獣医に体を触られたり、飼い主が強く叱った時に口を舐めるような場合には、緊張していて不安をまぎらわせようとしています。
敵意がないことを伝え相手を落ち着かせるシグナル
犬には、敵意がないことを相手に伝えるボディランゲージがあります。それを相手に送ることで、相手を落ち着かせようとします。
静止またはゆっくり動く
静止している場合やゆっくりした動作をしている場合などは、相手を刺激せずに落ち着かせようとしています。
散歩中に突然立ち止まり、そのあとゆっくりと歩き出し、何度か立ち止まりながら相手の犬に近づいていく場合などはこれです。
遊びに誘う
前足をかがめ、お尻を持ち上げるようなボディランゲージは、遊びに誘う動きです。
相手に敵意がないことを伝えるとともに、歓迎の気持ちと喜びを示しています。他の犬と出会ったときにとりやすいボディランゲージですね。
特に、体を動かしている時は遊びの誘いで、この姿勢でじっとしている時は相手を落ち着かせようとしています。
座る
その場で座るというのは、争いごとを回避するためや、服従を示すなど、安全を確保するためのボディランゲージです。
散歩中に他の犬が近づいてきたときに座った場合や、飼い主の脇にきて突然座った場合には、相手に落ち着いてというメッセージです。
そんなときには、飼い主も座って動きを止め、ゆっくりとした動きで静かに名前を呼んで安心させてあげましょう。
エスカレートした相手を冷静にさせるシグナル
興奮している犬や人に対して、「冷静になって」と伝えるボディランゲージがあります。犬は基本的に平和な生き物ですので、興奮している相手に対して不安を感じます。
あくび
相手に落ち着いてほしいときやストレスを感じた時には、あくびをすることがあります。
飼い主が叱った時や家族が大声で喧嘩をしているときにあくびをしている場合には、落ち着いてほしいというボディランゲージです。
間に割って入る
間に割って入るというボディランゲージは、人間同士、犬同士が接近し、緊張関係が高まりそうなときに出すシグナルで、争いを防ごうとしています。
ギュウギュウ詰めで座っているときに間に割り込んできた場合や、犬同士が近づきすぎている時に間に入る場合などはこれです。
伏せる
伏せるボディランゲージは、相手の興奮をおさめるときや、落ち着いてほしいときに行います。
「私は疲れた。みんなも落ち着いて」というメッセージを表しています。
例えば、散歩中に出会った相手の犬が伏せをした場合や、犬同士が遊んでいたときに伏せをした場合はこれです。
体を背ける
体ごと背けるというのは、興奮した相手を落ち着かせるための強い態度(拒否)のシグナルです。
他の犬に吠えられたり、飼い主に叱られたりしたときによく見られます。
散歩中に出会った犬が興奮して吠えながら近づいてきた時に、愛犬が相手にクルリと背を向けたときはこのボディランゲージです。
尻尾のボディランゲージ
犬は尻尾でもボディランゲージを行います。尻尾の動きには、様々な感情が写し出されています。尻尾の振り方では、下記の3つの気持ちを推測することができます。
- 犬の心理状態
- 犬が伝えたい意思
- 犬の社会的地位
尻尾の高さと振り方
尻尾の高低というのは、犬の自信の強弱がわかります。一般的に高いほど自信があると考えられます。
肛門腺とは犬の社会的地位や自信、性的状態についての情報ですが、尻尾を上げるということは、肛門腺のニオイをまき散らすことができます。だからこそ、尻尾を上げるというのは自信の表れ、尻尾を下げるというのは自信のなさを表すのです。
尻尾を振るスピードでは興奮度合いがわかります。早いほど興奮や緊張が高まっています。
尻尾を上げる
高々と尻尾を上げて、体も高くしているときには、自分の存在を大きく見せようとします。
自分に自信がある犬が行うボディランゲージです。
尻尾を上げて揺らす
尻尾を上げて左右に小刻みに揺らし、相手を凝視するのは、犬同士がすれ違うときにありがちです。
これは「道を開けろ」という意思表示で、もし相手が譲らなければ背中に前足をかけたり、あごを乗せるといった支配的な行動に出る可能性があります。
尻尾を下げたり挟み込む
体を低くして尻尾を下げ気味にしたり、後ろ足の間に挟み込んでしまうこともあります。
これは服従の意味で、「あなたに反抗する意思はありません」ということを示しています。臆病な犬に多いですが、臆病でなくても不安を感じたときにこういった尻尾になります。
尻尾の振り方
尻尾の振り方には様々な種類があり、この振り方によって意味が異なります。
- ゆったりと左右に大きく振る:親愛、信頼、信用
- 尻尾と同時に腰も大きく振る:幸せ、喜び
- 激しく振る:喜び、興奮
- 背中につけて左右に振る:喜び
- 立てる:警戒、注目
- 後ろ脚の間まで下げる:萎縮、怯え、不安
- 尻尾を下げゆっくり振る:とまどい
耳のボディランゲージ
犬の耳というのは、犬の状態を読み取るのに重要な部分です。
普通の状態で耳が立っているときは平常心ですが、垂直に跳ね上がるように立っている時は、誇示しているか、あるいは攻撃的な威嚇をしている時です。
耳の倒し方
また、耳が前方に倒れると興奮しているということです。逆に、後方に倒れる場合には、緊張しているということ。
このように後方に傾いている場合には、相手に和解を求めたり尊敬を表しているプラスの場合と、恐怖や防御的な威嚇をしているマイナスの場合があります。
口のボディランゲージ
犬は口の形を変えることでも、気持ちを表現します。
口を閉じている
口をしっかりと閉じて、舌を出していない状態というのは、犬が冷静なときの口元です。周りの状況を判断しています。
口を閉じながらも、耳が跳ね上がるように立っていたり、やや前傾している場合には、何かに興味を示しているということです。
口を開き舌を出している
満足や安定を表す口のボディランゲージです。のんびりしているとき、安心している時に見せます。
人間でいうところの笑顔のようなもので、飼い主にも喜ばれるので犬がよくする表情です。
唇がめくれ上がる
強い不快感を表す口元です。歯や歯茎がはっきり見えれば見えるほど、攻撃の意思が強くなります。
このシグナルは喧嘩を引き起こすというより、喧嘩の抑止力になります。相手に退散するか、服従するかを迫るからです。
犬歯を見せる
唇がめくれ上がり、犬歯を見せる状態にするというのは、威嚇の最終段階です。これ以上しかけたら噛みつくぞという合図です。
前歯の上の歯茎がむき出しになり、鼻にくっきりとシワが寄ります。
まとめ
いかがでしたでしょうか?犬は全身を使って、様々な感情や意思を表現します。
ボディランゲージをしっかりと覚えて、愛犬がどんな気持ちになっているのかを知ってあげることで、より愛犬とのコミュニケーションがしやすくなります。
ボディランゲージから愛犬の気持ちをしっかりととらえて、愛犬も飼い主もストレスなく暮らせるようにしていきましょう。
この記事を書いたペットとの暮らしの専門家
勝部 千尋
「書く・聴く・伝える」
執筆&犬猫お悩み相談『毛玉生活』運営
ライター/犬猫相談員
経歴
静岡県沼津市出身/京都芸術大学卒
大学卒業後、オーストラリアにワーキングホリデーと...
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